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【恨まれない処世術】元刑事が現役時代に実践していたこととは?

人間関係

人は知らず知らずのうちに、人の恨みを買ってしまっているものだ。刑事となれば、逮捕したり、取り調べをしたりした犯罪者から逆恨みされることも少なくない。そうした中、ある元刑事は、なんとか恨みを買わないためにやっていたことがあるという。今回は、現在、一般社団法人日本刑事技術協会代表理事を務める、元刑事の森 透匡氏に、その方法を手ほどきしてもらった。

コミュニケーション スキル

※画像はイメージです(以下同)

元刑事が関わった犯罪者から恨みを買わないためにしていたこと

森氏は現在、刑事だった約20年間で培ってきた経験とテクニックを元に「ウソや人間心理の見抜き方」などをテーマとして、ビジネスパーソンに役立つ知識やテクニックを教えている。

森 透匡氏
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事

そんな森氏はかつて詐欺、横領、贈収賄事件などを扱う知能・経済犯担当の刑事を約20年務める中で、2000名以上の取り調べ・事情聴取などを行ってきた。

刑事といえば、被害者などからは感謝されることが多い一方で、犯罪者には逆恨みされることもあるという。

刑務所から出てきた者が報復行為をする「お礼参り」や受刑者からの脅迫めいた手紙など、刑事はいつもリスクと背中合わせだ。

何か先回りして手を打っておかなければならない。そう考え、森氏が行っていたのが、この方法だ。恨みを買っていそうな犯罪者に対し、第三者を介して「あなたのことをよく思っている」というメッセージが伝わるように取り計らっていたという。

つまり森氏から、第三者に「あの人はすごい人だ」「あの人は、根はすごくいい人だ」などと伝え、第三者から対象者に対して「褒めてたよ」「『すごい』と言っていたよ」などと伝えてもらう。そうすれば、対象者は自尊心をくすぐられる。褒められて嫌な人間はいないからだ。

第三者を介して褒める「ウインザー効果」

なぜ、相手に直接、褒め言葉を伝えるのではなく第三者を介して褒めるのだろうか? 森氏に聞いた。

「仮に、自分が対象者から恨まれていると感じた場合、自分から直接『あなたをよく思っている』と言うのは何か嘘臭くなりますし、信用性に欠けます。そのため、他人である第三者を使って『よく思っている』ということを、それとなく伝えるのです。

これは恨まれている相手だけでなく、褒めるときにも使えるテクニックです。あえて他人を介して褒めるわけです。

第三者を通して間接的に褒められるほうが、より嬉しさが増す効果を、心理学では『ウインザー効果』といいます。当事者からすると、第三者から褒め言葉を聞いて『それってどういうこと? そんなこと言ってたの?』と疑問に思って、素直に聞く耳を立てるでしょうし、信用性も高くなるというわけです」

ウソはいけない

森氏は、褒めるときには決してウソをついてはいけないと警告する。

「相手を褒める場合、多少の誇張はいいとしても、ウソはいけません。例えば、誰が見ても褒められることではないことを褒められたら、さすがに本人もおかしいと気付きますし、褒め殺しだと思われるかもしれません。自分のことは自分が一番よく知っているからです。

基本的には相手をいろんな角度から見て、純粋に褒めるべきことを探して褒めるべきでしょう。できれば本人が気づいていないこと、普段、何気なくやっている些細なことを褒めると効果的だと思います。それは『あなたのことは興味を持って見ている』という証拠だからです」

恨みを買わないために実践していたこと

ところで森氏は刑事時代、他に恨みを買わないために実践していたことがあるという。

「基本的には、相手のことを犯罪者ではなく、ひとりの同じ人間として接していれば恨みを買うことはありません。犯罪者であってもひとりの人間です。人間、誰しも過ちは犯します。過ちを犯した理由について共感できなくても共感し『君の気持ちはよくわかるよ』と寄り添っていれば『この人はわかってくれている』と相手も心を通わすようになります。

感情的に好かれなくてもいいのです。嫌われないようにすることが大事です。嫌われてしまうと、憎悪という感情が芽を出してしまうからです」

それは刑事と犯罪者の関係だけでなく、一般的な人間関係においても同様のことだ。恨みを買わないために、注意したほうが良い行動があるという。

「当然ながら、人として嫌われる行動を取ることは、恨みを買うことにつながります。約束を守らなかったり、ウソをついたり、相手が大事に思っている人をバカにしたり。そんなことをされたら誰しもカッとなりますし、憎しみを持つでしょう。どんな身分、立場の人間でも、承認欲求は必ずあります。誰しも人として認められたいのです。ですから、人として許されない行動は慎まないといけません」

恨みを買いたくないなら、もしくは人を褒めたいときには、第三者を介してウソ偽りのない褒め言葉を伝えておくと良さそうだ。くれぐれも恨みを買うような行動には気をつけよう。

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【取材協力】
森 透匡(もり・ゆきまさ)氏
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事
国税庁税務大学校、財務省税関研修所 研修講師
経営者の「人の悩み」解決コンサルタント(人事コンサルタント)
警察の元警部。一般社団法人日本刑事技術協会の代表理事として「ウソや人間心理の見抜き方」を主なテーマに大手企業、経営者団体など毎年全国180か所以上で「ウソの見抜き方」を主なテーマに講演・企業研修を行う。メディア出演も多数。
https://j-keiji.org/

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