「完全な妖怪になりたい」京大卒の30歳ピン芸人が描く“異色のキャリア”
大学院の修士課程で決めた「進路」
──修士課程では研究者を目指していたのですか?
九月:意識はしていました。ただ、自分の適性や能力を考えたとき、学問は方法としてあまり向いていなさそうだったんです。1つのテーマをじっくり研究していくというよりは、その都度その都度に自分が思ったことを表現していくほうが好きだし、向いていそうだなと思いました。そこで何かしらを表現・発信しようと決めました。方法としてはきっと映画でも小説でもよかったのですけど、たまたま、結果的に「お笑い」に辿り着きました。
──九月さんはどのような流れでお笑いに出合ったのでしょうか?
九月:もともとお笑いは好きでよく見てもいたのですけど、自分がプレイヤーになるとは思っていませんでした。何かを作って人前で披露する公演をしていたら、いつのまにかそれが暮らしのメインになっていて、どうやら“芸人”になっていた……という感じです。
気づいたら「お笑い芸人」になっていた
──「とりあえずやってみた」で芸人になれるのはすごいです。
九月:当初はお笑いの世界のことは本当に何も知らず、事務所や養成所に入るといった芸人になるためのコースがあることも知りませんでした。とりあえずネタをつくるところから芸人活動を始めることにして、その後は大学院在学中の2016年、お笑いコンビ「カフカ」を結成し、芸人としてのキャリアをスタートしました。
──なかなか珍しい芸人のなり方ですね。実際に公演をしてみていかがでしたか?
九月:当初、僕はお笑いの世界のことをほとんど知りませんでした。芸人の友達もいないし、お笑いサークルにいたわけでもないしで、情報がなかったんです。だから勝手にネタを作って会場を借りて単独ライブをやるようになりました。今思えば、それって本当に変な始め方なんです。
普通は養成所に入るか、でなければ制作会社などが主催する、エントリー性のオーディションを兼ねたライブに出るものなんです。でもそういう相場が分からなくて、いったんオール手作りで始めたんです。そういう自主制作の公演、一番最初にやったのは2016年でした。