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正気の沙汰とは思えない「原発再稼働」。再エネよりも火力発電を選ぶべき理由

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 新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来、連日テレビに出てワクチンの必要性を力説している「専門家」たちが注目を集めてきた。しかし、「そもそも“専門家”とは誰かということ自体、実はかなりあいまいである」と述べるのは、テレビでもおなじみの生物学者池田清彦氏@IkedaKiyohiko)だ。

火力発電

※画像はイメージです(以下同じ)

 科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野に関する著書を持つ池田氏が、「専門家だからこそ言えないようなこと」を、その分野の文献や客観的なデータを踏まえながら論じた著書専門家の大罪-ウソの情報が蔓延する日本の病巣』より、「原発、再エネよりも火力発電を選ぶべき理由」についての章を紹介する(以下、同書より抜粋)。

地震大国、天文学的な被害額…

 日本は多くの老朽化した火力発電所を休廃止した結果、電力のひっ迫が深刻化している。岸田文雄首相は、2022年7月14日の記者会見で「原発を最大9基、火力発電所を10基稼働させて、この冬の電力供給を確保したい」と述べていたが、日本のような地震大国で原発を稼働させるのはあまりにリスクが大きすぎて賛成できない。

 ヨーロッパ諸国のほとんどは、ユーラシアプレートに位置していて、地盤が安定しているので、例えばフランスなどは原発を推進している。一方、ヨーロッパでも例外はあり、ユーラシアプレートとアフリカプレートの間に位置するイタリアや、ユーラシアプレートと北米プレートの境にあるアイスランドは、地震大国かつ火山大国である。

 そのせいで、イタリアは1987年のチェルノブイリ原子力発電所の事故を受けてすべての原発の運転を停止し、その後一切動かしていない。2018年時点での電源構成比は化石燃料が60%、水力が17%、その他の再生可能エネルギーが23%である。再生可能エネルギーの内訳は太陽光8%、風力6%、地熱2%、バイオマス等7%であり、火山大国にしては地熱の割合は多くないようだ。

合理的に考えて「原発はゼロ」

専門家の大罪

池田清彦『専門家の大罪-ウソの情報が蔓延する日本の病巣』(扶桑社新書)

 一方、アイスランドでは電源はすべて再生可能エネルギーで、地熱が20~30%、残りは水力である。地熱は、電力ばかりでなく家庭用の暖房や給湯にも使われており、暖房費は石油を使う場合の4分の1だという。人口が37万人とごく少ないということもあるが、自然の恵みを上手に使っているのは間違いない。

 日本に地震が多い理由は地質学的にも明らかで、日本列島に沿ってプレートの境目が縦横に走っているからだ。東方の太平洋プレートと西方のユーラシアプレートの間に、北方からは北米プレートが、南方からはフィリピン海プレートが入り込み、とにかく至るところが地震の巣なのである。

 例えば、2011年の東日本大地震は太平洋プレートと北米プレートの境目に当たる三陸沖の太平洋で起きたし、2030~2040年にまず間違いなく起こると考えられている南海トラフ地震は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境目にあたる紀伊半島沖から四国沖で発生すると予想されている。

専門家の大罪-ウソの情報が蔓延する日本の病巣

専門家の大罪-ウソの情報が蔓延する日本の病巣

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