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マクドナルド、V字回復の背景。客層は本当に良くなったのか?

ビジネス

 マクドナルドが2015年の品質問題による業績悪化から吹き返して、好調を続けています。その業績回復の背景には、コスト面の改善(品質問題ショックを契機とした店舗の選択と集中、人員削減や給与体系の変更、フランチャイズによる変動費化など)だけでなく、売上の回復もあります。

マクドナルド店舗

マクドナルド店舗

 売上について話題になっているのが、店舗の改装、メニューの見直し、参加型のイベントの継続的な実施など、積極的なアクションの奏功です。もっとも落ち込んだ’15年が1895億円でしたが、’16年は2266億円、’17年見込みはその11.8%増の2533億円と、回復トレンドに乗っていそうです。

何が業績回復を支えたのか?

 トップが外国人であるからか、人員削減をする一方での好き嫌い人事の話題などが巷でされているようでもありますが、前向きな取り組みが結果に結びついているのは間違いなさそうです。

 ’16年末は店舗で1700人(アルバイトなどは12000人)、管理系で550人。リストラ前の’15年末の時点では2130人(アルバイト14700人)、管理系で634人でした。店舗は20%減(アルバイトは18%減)でも管理系は13%減に留まっています。

 もちろん一定レベルの固定人員は必要ですので比例すべきとは言えませんが、好き嫌い人事があるとするならば、ありがちなのは目の前にいる管理系の人員の中から一部だけ優遇することかもしれません。

 マクドナルドの取締役は9人中、日本人は5人です。ただし、営業出身は2人のみです。他は弁護士や銀行出身など管理間接部門です。店舗が収益源でありながらも管理系の人員が優遇される流れがある可能性も否定できません。

 売上2000億円のうち人件費は60億円程度です。大部分がパートタイマーでしょうから、「自分の周りに置いておくお気に入りの面々」の給与を上げても、業績には大きくは影響がありません。外国人でも日本人でも、「優秀なんだからお金を上げよう(だから自分には絶対服従だ)」といってニンジンをぶら下げる経営者はたくさんいますし、やろうと思えばやれる規模にあります。

 ただ、好き嫌いをどこまでやるかは別として、この発想は数多の業績好調企業は少し見習った方が良いのかとも思います。筆者が聞いた例では、大手建設会社では過去最高益を出す見込みでありながら、去年よりボーナスの平均値を下げています。社内では「ちょっと業績が上がっただけで浮かれるな」というメッセージが出ているとか。

今の50代は「嫉妬心」を持っている?

 筆者が察するに、根底にはバブル崩壊やリーマンショックの時代に、当時諸々お金が必要な40代くらいを過ごした高齢者たちには「俺たちが冬の時代を直撃してきたんだから、若い奴になんておいそれと美味しい思いさせてやるか」という嫉妬というのか、体育会系というのか、そうした複雑な思いがあるように思えます。もちろん「いつまた冬がやってくるのかわからないから、備えておこう」という冷静な判断も嘘ではないと思いますが。

 筆者の友人は30代に銀行子会社の投資会社に勤めていた際に、親銀行から出向できていた50後半の銀行員とよく議論になったそうですが、毎回論破していたそうです。親会社から来ていても、その子会社の実務に精通しているわけではありませんので、無理もありません。

 ましてや融資と投資では真逆の思考回路が求められます。ただ、論破されている側もプライドが許さないのか「だいたい俺は、お前らの歳の頃にはそんな給料もらってなかったんだ! おかしいだろ!」とかよく叫ばれていたそうです。

 口に出す人はさすがに少数かとは思いますが、古い産業にはそうした感情を持つ高齢社員や経営者は多いのかと思います。そうした雰囲気のある会社は、ある程度業績を利用して少なくとも自分が優秀だと判断した社員くらいは優遇することは考えた方がいいのかもしれません。ちなみに、友人は優秀でしたので数年もいないうちに、まともな同業他社に転職してしまいました。

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