「石油元売り」大手3社が最高益に。原油価格上昇でもなぜ儲かるのか
会社の命運を左右する脱炭素への取り組みは?
さて、昨今よく聞かれる脱炭素ですが、再生エネルギー発電の導入による脱火力発電や自動車のEV化が進めば石油元売業界の業績は悪化することが容易に予想されます。
そして直近ではガソリン車の燃費向上や製造業における効率化・省エネ化が影響し、2025年まで重量当たり年率1~2%台で国内の燃料需要が減少すると予想されています。脱炭素が進むなか、大手3社も将来の収益化を狙って脱炭素の取り組みに力を入れているようです。
ENEOSホールディングスは風力・太陽光といった再生可能エネルギー発電を手掛けるジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)を約2000億円で買収するなど、再生可能エネルギー分野に対し、3年間で4200億円を投じる計画を立てています。JREは2012年設立の企業で、すでに国内各地に太陽光発電所を多数設立しています。
出光興産は事業セグメントとして「電力・再生可能エネルギーセグメント」を設置しています。2022/3期末の売上高は1400億円程度で、同セグメントの大部分は火力ですが、米国やフィリピンで大型の太陽光発電所を完工するなど海外で力を入れているようです。
コスモエネルギーHDも国内で風力・太陽光発電所を運営し「再生可能エネルギー事業」セグメントを設置していますが、2022/3期の売上高は131億円に過ぎません。当然ながら3社とも主要事業である燃料精製事業と比較できるほどの規模には至っていないようです。
有望な技術はライバルが多い
石油元売がEVを製造したり、蓄電池を生産したりするのはほぼ不可能であり、脱炭素分野で投資するにはやはり再生可能エネルギー発電があげられます。同分野では太陽光・風力発電が主力ですが、国土が限られる日本では環境や景観を損ねるなど負の側面が謳われています。
そこで近年注目されているのが広い海を活用した洋上風力発電です。秋田県沖の洋上風力発電について政府による公募・入札が進んでおり、2021年の第1弾ではコストで優る三菱商事が選定されました。第2弾ではENEOSが狙うほか、青森県沖の入札でコスモエネルギーHDが応札するなど石油元売業界も必死なようです。
しかしながら各公募への参加企業を見ると東京電力や大阪ガス、丸紅など商社やエネルギー業界から多数のライバルが参入しており、さながら椅子取りゲームのような様相です。国内の燃料需要が減少し続ける一方、脱炭素といった新分野への参入も競合に阻まれるなど、石油元売業界は今後、新しい稼ぎ頭を見つけられず規模縮小が続くことが予想されます。
<TEXT/経済ライター 山口伸 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>