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一部の身分の高い人ならでは、のんきな感想が

藤原定家

藤原定家が書いた『明月記』が飢饉を描くと…

 そのほかにも、平安時代末期から鎌倉時代前半に生きた藤原定家が書いた『明月記』には、飢饉が起こったせいで、いろんなところに人が倒れており、人間の腐った臭いが立ち込めていたという記述だけでなく、自分の屋敷にもその腐った臭いが入ってきて、臭くてかなわなかった……との感想が書かれています。

 ですが、藤原定家は高い地位にいる貴族で、いわば現代の政治家のようなもの。本来であれば、「飢饉で苦しむ民を助けなければ」「基金への対策ができず、人々を救えなかった自分が恥ずかしい」などのコメントがあってもおかしくないのですが、定家は「臭いし汚いし困ったよ」というのんきな感想しか残していません

「民衆」をそっちのけにして、貴族たちは恋愛や文化を楽しんでたいそんな時代に、平安時代の文学は生まれたのでした。

<TEXT/歴史学者 本郷和人>

東京都出身。歴史学者。東京大学・同大学院で石井進氏・五味文彦氏に師事し日本中世史を学ぶ。大河ドラマ『平清盛』など、ドラマ、アニメ、漫画の時代考証にも携わっている。おもな著書に『東大教授がおしえる シン・日本史』など

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