「トヨタグループのホテル」元支配人が明かす、親密な付き合いとなる“女性”との出会い
相手の期待をいかに超えるか
テラス蓼科がオープンしたばかりのころ、レストランとフロントのオペレーションが定まっておらず、スタッフたちはまだあたふたしていた。ちょうどこの時期に、“名古屋セレブ”の上品な奥様4人がお見えになり、レストランの窓際のテーブル席で食事をしたことがあった。
定員4人のやや狭めのテーブルに着くと、奥様たちの目が「私たち、こんなきちきちのテーブルでなんか絶対に食事しないわよ」と訴えているのがわかった。さすがに見て見ぬふりをするわけにはいかず、コンタクトを取りながら、できる限りの応対をすることにした。
まず私は、テーブルに空き皿が溜まらないように、担当者に伝えた。さらに、ビュッフェ台で辺りを見回しているようなら、すぐに手を差し伸べるように指示を出した。
特にトイレへ行かれる際はレストラン側にとってチャンスであり、トイレへの案内をしながらお客様とのコンタクトをしっかりと取るようにした。このようにしてお客様とのコンタクト率を上げることで、狭いテーブル席に案内してしまった埋め合わせをしていったのだ。
食事中のケア以上に重要なのは…
どうしても解決できないことがあれば、次善策で対応するしかない。顧客が最も不満に感じるのは、狭いテーブルに案内されたという事実ではなく、「あなたたちを気にかけてないよ」という店側の態度のほうなのだ。こういうケースでは、食事中のケア以上に、お帰りになる際の声掛けが非常に重要になる。
例えば、狭いテーブルに案内してしまったような場合は、レストランを出られる際に、マイナス要因について必ず一言お詫びを入れるようにする。「ハードよりハート」という言葉があるように、狭めのテーブルというハード面は改装でもしない限り、解決し難い問題だ。だからといって、その都度、改装するようなことは物理的にできない。