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アイドルマニアのやりすぎた青春を問う

【あの頃。】
配信:Netflix、Amazon Prime Video 他

あの頃。

『あの頃。』DVD 監督:今泉力哉 出演:松坂桃李、仲野太賀、山中 崇、 若葉竜也、芹澤興人 他  販売元:TCエンタテインメント

 映画『あの頃』はアイドルマニアの回想だ。劔樹人(つるぎ・みきと)によるエッセイ『あの頃。男子かしまし物語』(イースト・プレス)が原作で、主人公のハロプロオタク・劔を松坂桃李が演じている。

 どん底生活を送っていた売れないバンドマンの劔は、ある日、友人から借りた松浦亜弥のMV『桃色片想い』に心を奪われる。オタクイベントで出会ったコズミン(仲野太賀)ら仲間たちと夜な夜な集まり、ライブDVDを観ては推しメンについて語り合う。

 アイドル本人が出るわけでもない地下イベントを定期的に開催し、啓蒙活動と称して大学の文化祭に参加しては学生をドン引きさせる。価値観の合う人間に出会ったことで、ドンドン浮世離れした人間に。その姿が共感性羞恥心をくすぐってくる。

「冗談なのか本気なのかわからない」

「アイドルマニア」とはおこがましくて名乗れないレベルの僕ではあるが、オタクたちの異常な行動の原理について考えを述べさせていただきたい。例えば、コンサート会場では、自分の推しメンの缶バッチを全身につけまくった異様な出立ちのファンがいる。これはアイドル本人に向けての愛だけではなく、「俺はこんなに推しを愛しているんだぜ?」という仲間へのアピールだ。

 このアピールも元々は半分冗談、半分本気という感じだったはず。いや、冗談の方が分量は多いかもしれない。しかし、それが次第にエスカレートし、いつしか本人たちも「冗談なのか本気なのかわからない」という地点に到達、結果として浮世離れしてしまう。

 その最上級と呼べるのが、劔たちなのだ。アイドルに熱中した過去の日々はかけがえのないものではあるが、決して美しいだけではない。やり過ぎた青春の是非を問う作品だ。

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