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歌舞伎役者から39歳で転職。「銀座 蔦屋書店」書店員が語る“異色のキャリア”

ビジネス

社長に買ってもらったスーツ3セット

蔦屋書店

――そこから八重洲にオフィスを構える大企業の社長室で新規事業に携わっていたそうですが、これまで経験のない職種への転職に不安ありませんでしたか?

佐藤:もちろんすごく不安でしたよ! でも、歌舞伎の世界を出てから転職しつつも仕事をすることができていたし、チャレンジしてみようと思って飛び込みました。

――実際に入社して、どんなことがありましたか?

佐藤:そこは事業がうまくいっていてグループ会社がいくつもあったんですが、そのグループ会社の中で美容皮膚科事業をやっているところが新たな人材を求めているという話が出たんです。僕はそこによく挨拶に行っていたんですが、現場の人たちが僕の名前をあげてくれたみたいで、いきなり「美容皮膚科の病院の事務長になってほしい」と言われました。

――それはかなり突然の話ですね!

佐藤:はい。でもさすがに自分には無理だと思ったので、「替えのスーツも持っていないくらいの人間ですから」とお断りしたんです。そしたらなんと社長がポケットマネーでスーツとネクタイとシャツを3セットも買ってくれて、辞退できなくなってしまったこともありました。今となっては懐かしい思い出です。

図星だった「転職してしまう」理由

蔦屋書店

こちらも佐藤さんが担当した企画の展示風景「江場琳觀作品展」(2021年7月10日~7月31日開催)

――これまでのお話を聞いていて、どの仕事のお話からもネガティブな印象を受けなかったのですが、それでも転職してしまっていたのはなぜでしょうか。

佐藤:銀座 蔦屋書店で働く前に、ある会社の面接を受けたのですが、その時、会社の顧問の方に言われて衝撃的だったのが「こんなに転職しているのはなぜだろうと思ったけれど、あなたは自分の上司とか社長を好きになろうとしているからだね」ということでした。

――上の人を好きになろうと努力してしまう?

佐藤:そうです。歌舞伎の世界では、師匠は絶対だし、師匠がやることは絶対素晴らしいと思わないといけない部分があって。歌舞伎の世界を出た後、僕はどこに行っても無意識にそういう感じでいたみたいなんです。その会社の顧問の方には、「仕事のシステムとして上司がいるだけで、そこで感情移入してしまうと仕事は続かないよ」とも言われましたね。

 そこで初めて自分が職を転々としていた理由がわかりました。どんな仕事に就いても結局、転職してしまうのは「上の人を好きになろう」、もしくは「絶対だ」と思おうとしてしまって、自分がついていけなくなっていたからだと思っています。

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