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ノンキャリア官僚だった「戦後最も偉大な総理大臣」が過ごした“ドサ回りの日々”

ビジネス

現場で仕事を覚えた池田勇人

 当時の大蔵省では、二十七~八歳で地方の税務署長を務めました。署長の仕事といえば、ひたすら接待づけになること、「若殿様」でいることです。地元の名士が、東京からやってきた役人を接待し、中央政府に目をつけられないようにする。

 中央省庁から派遣されてきた若署長は盲判を押すだけ。こうした官官および官民接待により、地元財界との癒着が成り立つという構図です。

 それにしても、通常の場合は、一度だけ地方の税務署長を二年ほど務めた後に中央に戻してもらえるのですが、二回連続。さらに地方をぐるぐる回されるという時点で出世の芽はありません。

 ただ、ここで池田が偉かったのは、現場で仕事を覚えたことです。明治の官僚も令和の今もあんまり変わらないので、官僚の実態を説明します。官僚には大きく二種類います。一握りのキャリアと、圧倒的多数のノンキャリアです。

キャリアとノンキャリアの違い

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 キャリアとノンキャリアの違いは、最もわかりやすい警察で説明します。警察の仕事は、捜査と逮捕です。事件を捜査して、犯人と疑わしい人物を逮捕する。実際の警察の仕事をするのは、ノンキャリアです。

 ドラマ『相棒』で言えば、主役の水谷豊演じる杉下右京はキャリアですが、歴代相棒のうち初代の亀山薫(演・寺脇康文)、二代目神戸尊(演・及川光博)、三代目甲斐亨(演・成宮寛貴)はノンキャリアです。現在の四代目、冠城亘(演・反町隆史)は法務省キャリア出身という手の込んだ設定です。

 法務省は司法試験に受かっていないとノンキャリア扱いされますが、あそこの役所はわかりにくいので、詳しく知りたい方は『検証 検察庁の近現代史』(光文社新書、二〇一八年)をどうぞ。著者名は忘れましたが、あれは名著です。

嘘だらけの池田勇人

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若き日の挫折人生、中間管理職時代を乗り越え、これからというところで志半ばで倒れるも、その功績で日本を今なお救い続けている池田勇人の知られざる物語

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