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異色デビューの漫画家が描く、現代の「恐竜の飼育員」たちの働き方<マンガ>

コラム

 現代の江の島を舞台に、リアルすぎる恐竜描写の漫画ディノサン』。著者の木下いたるさん@kurinosukeboy)は高校卒業し、単身渡米、その後、パラオで飲食店の立ち上げスタッフとして勤務。日本に帰国後、映画館で働くかたわら、漫画家を目指し30歳目前デビューという異色の経歴を持っている。

ディノサン

『ディノサン』(新潮社)

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第1話掲載の前半は⇒コチラ

 そして、本作がデビュー2作目の連載となるが、前作『ギガントを撃て』(講談社)に続いて再び恐竜を題材にするほど筋金入りの恐竜好きだ。今回、前出『ディノサン』を一部掲載するとともに、木下いたるさん本人にも、当時の苦労話や漫画家デビューのきっかけなどを聞いてみた。インタビュー前後編の後編。

パラオで働いていた経験を漫画に

――前回のインタビューで、実力不足でなかなか連載まで辿り着かなかったとのことですが、漫画家の夢を諦めようと思わなかったのですか?

木下:とにかく結果が出ないので、30歳までに連載をとれなければ、マンガ家を諦めると決めていました。、実際に就職先も調べたりして、いきたい会社にも目星をつけていたのですが、ちょうど30歳になる直前に前作の連載の兆しが見え、なんとかデビューにこぎつけました。それで、今もそのままマンガを描いています。

――そのデビュー作『ギガントを撃て』に続き、今作も恐竜がテーマですが、なぜ恐竜を漫画にしようと思ったのですか?

木下:まず、小さい頃から恐竜が好きだったんです。また、お金を稼ぎにパラオで働いていたことがあったんですが、当時住んでいたアパートの部屋の外が密林のジャングルで……。夜は奇妙な動物の鳴き声が聞こえる正に恐竜のいそうな場所でした。毎夜、その声を聞いていたら、恐竜を題材にすることを思いついたのがきっかけです。

――きっかけが意外ですね!

木下:ベットの上でハッとしましたね。着想時から恐竜ものを描くなら“恐竜を飼育管理する物語を描きたい”ということははっきりしていました。理由は『ジュラシックパーク』で、そこ(飼育の様子)が一番気になったものの、ほとんど描かれなかったことが心に残っていたからです。また、小さい頃から生き物をたくさん飼ったり、肥育や農業の経験があったので、自分が描くならそういった世界観しかイメージできず、そこは揺らぎなかったです。

 しかし恐竜を上手に物語に落とし込むという作業は本当に難しくて、なかなか企画は通らず……。前作では色々あって一度パニックアクションものを描きましたが、真に描きたかったものはずっと変わらず恐竜の飼育管理ものでした。今回コミックバンチさんでようやくディノサンという世界を丸ごと面白がっていただき、10年越しに念願の企画での連載が叶った形です。

『ジュラシックパーク』からの影響も

漫画家

漫画家の木下いたるさん

――作品の中で、自分の経験が一番生かされてると思う部分は?

木下:やはり家畜の飼育経験だと思います。父が養鶏を仕事にしていたこともあって、小学生の頃から鶏、豚、牛などの飼育の手伝いをしていました。また、そこで働くプロフェッショナルの姿を通じて、“かわいい”といった優しいことばかりではない飼育の世界を目の当たりに。小さい頃からそのような環境に身を置けたのは大きな経験ですし、恐竜園が舞台の今作に多分に生かされていると思います。

――まさに好きなものと実体験がリンクした作品なんですね。漫画家になって良かったことはありますか?

木下:自分の漫画が誰かの生きる力や人生の楽しみに、ほんの一瞬でもなってくれればいいなと思って描いているので、もしそう感じてくださっている方がいれば、漫画家になって良かったなと思えると思います。

――最後に、漫画を通して知ってもらいたい恐竜の魅力をお願いします。

木下:恐竜も自分たち人間と同じように、食べて糞をして寝る生き物であったということです。

ディノサン 1

ディノサン 1

1946年にとある島で生き残りを発見。その後、繁殖や遺伝子操作によって、現代に再生されることとなった恐竜。圧倒的存在として人々を魅了してきたが、ある“事故"がきっかけでブームはすっかり下火に。

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