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菅義偉首相に読ませたい中国古典。名経営者がこぞって勧める最高のリーダー論

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『貞観政要』(じょうがんせいよう)という本の名前、聞いたことはあるでしょうか? 日本史や中国史に強い関心がある方は「聞いたことがある!」かもしれません。しかし、それ以外の人にとっては「ハテナ?」だと思います。ところが、実はこの書物、経済人や学者からも絶賛されるリーダー(指導者)論の古典なのです。

読書

画像はイメージです

 よって、興味がある人もない人も読んでみて損はないと思います。とは言え、『貞観政要』は現代語訳されたものが800頁近いものですので、誰でも気軽に簡単に読めるものではありません。そこで、今回は、様々な古典を超訳(現代語訳)してきた筆者(濱田浩一郎)が、そのエッセンスを抜き出し、皆さんにお伝えしたいと思います。

多くの経営者が名著と絶賛している1冊

 ちなみに、多数の書籍を上梓している出口治明氏(ライフネット生命保険株式会社創業者、現在、立命館アジア太平洋大学学長)もこの書物を絶賛するうちの1人。出口氏は「何人かのリーダーに、これを読めと勧めた」「ビジネスのすべてのエッセンスが描かれていた」として「世界最高のリーダー論」が学べる古典であると『貞観政要』を誉めています。

 また、トヨタ自動車の社長、会長を務めた張富士夫氏、1万人以上に社会人教育を行う田口佳史氏(株式会社イメージプラン代表取締役社長)も『貞観政要』を名著としています。

 では、『貞観政要』とは、一体、どのような作品かといいますと、中国の書物なのです。そもそも「貞観」というのは、中国は唐の時代(618~907)の元号で、初唐と区分される時代です。そして「政要」というのは、政治の要諦(物事の最も大切な点)という意味。この貞観の世を統治したのが、唐王朝の二代皇帝・太宗(李世民)。『貞観政要』は、この太宗(598~649)と側近たちの言行録なのです。

なぜ名著とされているのか

貞観政要 (ちくま学芸文庫)

貞観政要 (ちくま学芸文庫)

『貞観政要』(全10巻・40篇)は、太宗の死後、40数年経った頃に、呉兢(ごきょう)という歴史家が編纂(へんさん)し、時の皇帝・中宗に献上されたものです。呉兢は「国家を運営する者は、この書に示された先人の軌跡を守り、良い点を選んでそれに従わんことを。そうすれば、国をいつまでも存続させる方針はいっそう明らかになり、国の業績はますます偉大なものとなるであろう」と『貞観政要』を読むことの効用をその序文で述べています。日本にも伝来し、徳川家康や明治天皇もこの書物に注目しました

「創業」(事業を始めること)や「守成」(創業者のあとを受け継いで、その事業を固め守ること)に役立つ書物とも言われますが、ではその肝は何でしょうか? 私は『貞観政要』の肝は、指導者は、臣下の耳の痛い主張でもよく聞けということにあると思っています

『貞観政要』には諫議大夫という役職の人(例えば魏徴)がたびたび登場します。諫議大夫とは、皇帝の誤りを諫め、忠告する役職のこと。魏徴は太宗に諫言すること200回以上にのぼったといいます。何より凄いのは、これほど耳の痛いことを何度も何度も言っても、太宗は魏徴を処罰することはなかったことです。

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貞観政要

貞観政要

唐代、治世の問題を真正面から取り扱い、帝王学の指南書となった。本文庫は明代の通行本(戈直本)を底本とし、全篇より七十篇を精選・訳出

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