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大企業で相次ぐビル売却。エイベックス、電通、HIS…それぞれの懐事情

ビジネス

「自己資本比率の違い」で明暗が

エイベックスとアミューズ業績推移

エイベックスとアミューズ業績推移 ※決算短信をもとに筆者作成

 注目したいのは、2020年3月期までの両社の自己資本比率の違いです。アミューズが60%台と厚みがあるのに対し、エイベックスは30%台後半。一般的に30%台後半という数字は決して悪いものではありません。しかし、コロナ禍という見通しの悪い中で難局を乗り越えるには心もとない数字です

 本社を売却したことにより、自己資本比率は50%台に回復しました。エイベックスが本社を売却した背景には、バランスシートの健全化があるものと考えられます。

 なお、2021年3月末時点でエイベックスが保有する現金は526億5400万円。2020年3月期が179億5600万円でしたから、およそ3倍に膨らんでいます。十分な流動性の確保で運転資金に回せるほか、M&Aなど将来的な事業拡大への備えもできました

無観客化決定で希望の光も消失

空港

画像はイメージです

 旅行会社大手のHISはエイベックス以上の窮地に追い込まれています。2021年10月期第2四半期(2020年11月1日-2021年4月30日)の売上高は前期比80.4%減の676億5100万円。310億8300万円の営業損失(前年同期は14億6900万円の赤字)、232億600万円の純損失(同34億5900万円の赤字)を計上しました

 これにより、自己資本比率は2020年10月末の17.8%から15.1%まで低下しました。実はHISは2020年10月に第三者割当と新株予約権の発行で226億円の資金を調達しています。

 それでも自己資本比率の低下が止まりません。2020年12月には発行可能株式総数を8855万株から1億5000万株に引き上げ、さらなる増資の資金調達準備を進めています。

 2020年10月末時点で保有する現金は952億3400万円。2019年10月末は2200億円近い現金を保有していました。1年で半分以上が消失したのです。

 HISは東京オリンピックが観客を迎え入れることに一縷(いちる)の望みをかけていましたが、それもかないませんでした。ホテル、飛行機がフル稼働するのはまだまだ先となりそうです。HISはバランスシートの健全化、運転資金の確保が喫緊の課題となり、竣工からわずか1年で本社ビルを売却することとなりました

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