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五輪チケット57万円分を買った30代の悩み「良い運の使い方をしたはずなのに」

ビジネス

正直、気持ちの折り合いはついていない

「当たった時は、誇らしい気持ちで、いろんな人に自慢していました。ただ、最近は複雑な気持ちです。一生に一回の出来事なので、現時点では足を運ぼうとは思っていますが、感染のリスクや、世間の目が怖いのも事実です。自分の中では気持ちの折り合いがついていません。

 だったら、無観客と決めてくれたほうがありがたいです。自分で見に行くか、見に行かないか選べる中途半端な状況は正直鬱陶しいなと思ってしまいます。良い運の使い方をしたはずなのに、なんでこんなことになるんだ……と」

 そう言って、山下さんは肩を落とした。五輪の開催に関しては、各所で議論が巻き起こっている。実際に、五輪中止を求める市民が聖火ランナーに向けて液体を発射する事件も起こった。さらに、IOC(国際オリンピック委員会)はチケットの再抽選の結果発表を、当初の6日未明から10日未明に延期すると発表した。

このままでは、純粋に楽しむことができない

山下さん

今回話を聞いた山下さん。寂しそうに外を見つめる…

「観客数の制限が発表されてから、共に観戦に行くつもりだった友人と連絡を取りました。2人で揉めることもなく、『行こう!』となりましたが、今の気持ちでは、現地に足を運んで、そこで選手たちが良いプレーをしても、大声を出すことが禁止されている状態では、素直に楽しむことはできないと思います」

 このまま有観客で開催が行われても、マスクの着用が義務付けられており、大声の応援やハイタッチ、肩を組んでの応援は禁止されている。さまざまな制約がある中で、現地観戦を純粋に楽しめないというのは「祭典」としていかがなものか。

 そして最後に、山下さんはこう語った。

せめてワクチン接種がもう1か月早ければ……と思う気持ちがあります。ただ、新型コロナウイルス関連の政策については、誰がやってもそれほど変わらなかったのではと思います。僕は、アベノマスクの配布に関しては、当時の政府はよく頑張ったなと思いますね。当時の状況では、一番国民が求めているものを提供したと感じました。

 今は、国民も含めて、みんなよく頑張っていると思います。だからこそ、もやもやの発散場所とかもわからずにやきもきしている状態です」

 開催が迫っている中、政府が緊急事態宣言の再発令を検討しているという報道もある。果たして政府は、国民に「おもてなし」を提供できるのか――。

<取材・文/ヤマタケ>

見習いライター。お笑いが生きがいで、都内のライブによく出没し、年間100〜200本のライブを鑑賞。芸人のラジオが外出のお供。他にも旅行とお酒が好きで、旅行先では必ず地元の日本酒を購入。諸々よろしくお願いします。

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