安月給はうつの原因になる?「給与が上がる企業」4つの共通条件
資金面・実績面において圧倒的No.1になる
最後には、(3)当該マーケットで資金面・実績面の双方において圧倒的No.1であることです。やはり自社が圧倒的なNo.1で他社を寄せ付けない成果を出しているマーケットは素晴らしいです。
お客様も多少高くても、圧倒的No.1の安心感をお金で買いますし、それが会社全体の余裕につながります。また、この段階になればある程度資本蓄積もできていますから、社員に高給を払う余裕も生まれてきます。
しかし、これだけでは社員に高給を払う条件にはなりません。この条件をすべて満たしていても、たとえばビジネスホテル経営であれば、事業のキーは不動産の適切なタイミングでの取得と予約管理の最適化、部屋のレイアウトの最適化が経営の鍵になるので収益の源泉になる意思決定は創業者1人で下すことができ、スタッフには薄給であっても経営は問題なく回るからです。スタッフが高給を得るためにはもうひとつの要素が必要です。
それは、(4)1:n構造における力の源泉がスタッフの力量にあることです。たとえば映像授業予備校であれば、顧客がずっと見ていたくなる授業を提供できる講師がその力の源泉です。また、ウェブメディアもアフィリエーターが顧客がずっと見ていたくなるサイトづくりができることがその力の源泉です。
ソフトウェア開発業も、世界中の多くの会社が使ってくれるようなソフトウェアを作れるエンジニアが力の源泉です。こういう業種で働くことが高給をもらう上では大切なのです。
「勝者総取り」市場を避ける動機づけ
では、なぜ給料が低い会社では、こうした1:n構造が効くビジネスをしないのでしょうか? 1:n構造が効きにくい、1:1構造に近いビジネスモデルを展開していてはスタッフに高い給料を払えないことなど、社長もバカではないのだから重々承知しているはずです。
にもかかわらず、日本のほとんどの会社が、1:n構造が効きにくい、1:1構造に近いビジネスモデルを展開しています。なぜでしょうか? それは、1:n構造の事業というのは「勝者総取り」の世界だからです。基本的には1:n構造の事業というのは、1位になればすごく儲かりますが、2位以下は極端に言えば事業撤退・倒産しかない、というマーケットなのです。
たとえば、映像授業予備校がそうです。今までは映像授業予備校は「東進ハイスクール」の天下でしたが、リクルートが「スタディサプリ」を導入して以降、にわかに雲行きが怪しくなっています。優勝劣敗が激しく、仮に成功しても大資本が土足で蹂躙してくるマーケットだとも言えます。
最近ではかなり業績も良くなってますが、「一太郎」を擁するジャストシステムとアメリカから上陸したマイクロソフトの関係も近いものがあります。利幅が大きい1:n構造の事業には世界中から最強の競争相手が参入してくるのです。
一方、1:1構造の事業はそうではありません。私の塾がどうにか生きながらえているのも、私の塾では個別指導しかしないからです。個別指導塾であれば、規模の経済はほとんど働きません。むしろ規模の不経済が大きく働く分野です。ですから、無一文の若者が最初に参入するには有利な業態なのです。
あなたの会社が1:n構造が効くビジネスをせず、1:1構造に近いビジネスモデルを展開しているのもおそらく似たような理由があるはずです。
<TEXT/起業家 林直人>