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比嘉愛未、30代半ばでやめられた“自分のアラ探し”。自然体で生きるコツ

暮らし

完璧主義で、いつも自身がなかった

比嘉愛未

――その俳優という仕事について、思うことはありますか?

比嘉:1人では絶対にできない仕事なんです。人に支えられて、救われて、自分が立っていられるということは、常日頃から感じています。お芝居を始めて15年くらい経ち、30代半ばになり、ようやく自分自身の力の抜き方がわかってきたように思います。

 今までは、どこか完璧主義なところがあって、人に対してというよりも自分自身に厳しすぎてしまい、ちょっとしたミスをすると、ずっと引きずってしまったりしていました。

――自分の問題の場合、ほかの人はわからないので苦しいですよね。

比嘉:まわりがいいと言ってくれた言葉も素直に受け取らずに、「いやここが……」みたいに自分のあら探しをしてしまうことがあったんです。よく言えば向上心があるということですが、もっと成長したい、上を目指したいという想いが強すぎて、空まわりをしていたような感覚だったんですよね。だから自信はいつもなくて、でもそういう顔をしていることもスタッフさんたちに申し訳なくて、反省ばかりの毎日でした。

 でも、いろいろな経験を経て、失敗しない人間はいないという当たり前のことに気づくんです。むしろ未完成だからこそ人間は面白い。登山で山頂ばかりを目指しているとしんどいけれど、登っていく過程で立ち止まってみたり、時に引き返してもいいと思うようになりました。楽しむ心のゆとりがあるだけで、ものごとの見え方が変わって、仕事が好きになるようになった。登山は大変だけれど、道中は楽しい、それに近い感覚に最近なりましたかね。

人の顔色をうかがうのはやめよう

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『大綱引の恋』より

――15年かけてようやく辿り着いたのですね。

比嘉:そうですね。今いるステージに無理なくストンと。比嘉愛未としての自分自身が無理せず、自然体でいられるようになってきたんですよね。これは面白いなと自分で思います。今回の作品を機会に、そういう心境になれたのかもしれません。でも、それは長い人生のワンステージでの話かもしれないですし、今後もいろいろなステージが出てくると思います。

――それは非常に大きな体験ですよね。

比嘉:佐々部監督を中心に2週間ほどみなさんと過ごして、ロケ地の薩摩川内では、コロナ禍になる前だったのでよく飲みに行きましたし、本当にいろいろなことを語り合いました。「完璧でなくていい」「1日1日を一生懸命楽しもう」「ラクをするのではなく、心を込めていれば誰も責めない」「誰かの顔色をうかがってやるのではダメだ」などなど、それは佐々部監督から教わったことでもありますね。

――いろいろな体験は、自分の視野を広げますよね。

比嘉:俯瞰で物事を見ることが大事とよく言いますが、人間ってどうしても感情的になってしまうと、狭い世界に閉じこもってしまうところがあると思うんです。たとえばモメている2人がいたとして、「なんでわからないんだ!」とけんかすることは、自分の意思を押し付けるからですよね。でも1回引いて、なぜこの人は怒っているのかと考えてみるだけで視点が変わる。その衝突が和らぐこともあると思うんです。結局は、自分次第ですよね。

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