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ネットで買える「ED(勃起不全)治療薬」は超危険!救急搬送された例も

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偽造品による健康被害も自己責任

救急車

 薬の個人輸入は元来、外国で治療していた日本人や、出身国の薬を日本で使う必要がある外国人のために便宜的に認められた仕組みである。だから、すでに述べたように、その行為自体は違法ではない。問題はその中に医師の処方箋を必要とするED治療薬が含まれていることだ。

 たとえ安く入手できたとしても、偽造品である限り、購入者は健康を害してもどこにも文句が言えない。服用に伴うリスクは当事者の自己責任になるからだ。偽造品にうかつに手を出してはならない大きな理由のひとつである。

 現在の法制度では、偽造品による健康被害は救済されない。重い症状を招いたとしたら結局、「安物買いの銭失い」なってしまうわけだ。

 実際、あるED治療薬の偽造品を試した40歳代の男性が服用後数時間で意識低下やけいれんを起こし、救急搬送された事例も報告されている。この男性が服用したのは、正規品と同じ形状であったものの、実在しない用量が表記された明らかな偽造品であった。

ネット通販の利用が犯罪の手助けに

 不正な薬販売サイトの動きを阻む活動をしている「レジットスクリプト」という組織がある。NABP(米国薬局協会)が認可している唯一の権威ある監視・認証機関だ。これまでに2万件以上の不正サイトを閉鎖に追い込んだ実績がある。

 同組織がグーグルとヤフーのサーチエンジンを利用して分析したところ、日本国内では随時2000から4000の個別ウェブサイトが処方箋医薬品の販売に関わっていることが分かった。そもそも通販で処方箋医薬品が買えること自体、法的にありえない。つまり、その実態そのものが偽造品の横行を浮き彫りにしているといえる。

「診察を受けるのが恥ずかしい」「誰にも知られずこっそり買いたい」「正規品よりも格段に安い」といった理由で通販品に飛びつくことは結果的に犯罪を手助けしていることにもなる。このため、警察庁をはじめとする公的機関は通販品の利用に注意を呼び掛けている。

 ED治療薬は正しく使えば高い確率で確実に良い効果をもたらす。服用者の心身両面にはたらき、パートナーとの性的な充足感を満たす。得られる幸せは金銭には代えがたい。ネットを利用するのは最終的に個人の自由だが、それには常に大きなリスクが伴うことを忘れてはなるまい。大切なことなので繰り返すが、安易な利用は結局、高いものにつく。

<取材・文/伊藤公壹 監修/夏目泌尿器科院長・夏目紘>

ジャーナリスト。元新聞記者、雑誌編集者。新聞、雑誌、Webなど、さまざまな媒体に携わりながら、一貫して取材、執筆、編集業務に従事。日本性機能学会、日本メディカルライター協会会員

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