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国道沿いに「3軒のスーパー銭湯」なぜ鶴見は“銭湯激戦区”になったのか

暮らし

 働き盛りの若いビジネスマンは日頃の疲れをとるため、銭湯へ行くことも多いだろう。プロボクサーである筆者にとっても、練習後の体のケアや試合前の減量に、銭湯は欠かせないものだ。

鶴見

横浜市鶴見区の国道1号線沿いには3軒のスーパー銭湯が並ぶ(※ヨコヤマユーランドの男性浴場)

 そんな私が、横浜市鶴見区の国道1号線沿いを走っていた時のこと。立て続けに並ぶスーパー銭湯の看板が目に入った。家に帰り地図をみると「ヨコヤマユーランド鶴見」「おふろの国」「RAKU SPA 鶴見」と並んで3軒もあるではないか。なぜスーパー銭湯が3軒も並ぶのか。どのように共存しているのだろうか。不思議に思い調べてみることにした。

銭湯いっぱい!鶴見ってどんな街?

 鶴見区は川崎市の西側に位置する。のどかな漁村だったが、近代に入ると鶴見は京浜工業地帯として変貌した。2019年発行の『郷土つるみ(機関紙)』によると、大正時代に東京湾の埋め立てが進み工場が増えた。日本全国から、さらには朝鮮半島や南米からも労働者が集まりいまの工業地帯ができた。そして、銭湯もそこに数を増やしたのである。

 1915年(大正4年)に開業し、30年前まで銭湯も経営していたという氷屋ツルミセイヒョウ株式会社4代目店主の飯山尚子さんは、鶴見の土地柄について、「このあたりは肉体労働者が多く、家賃の安い風呂なしアパートが多かったから、銭湯も必要だったのではないか」と語る。

 そんな鶴見の銭湯だが、平成に入り燃料費の高騰や施設の老朽化、後継者不足、そして風呂付き住居が一般化したことが原因で、激減していく。

 その一方で数を増やしたのが、健康ランドやスーパー銭湯だった。市民の「日常生活」を支える銭湯に対し、健康ランドやスーパー銭湯はファミリー世帯をターゲットにした「非日常の空間」を提供している。最近はスーパー銭湯に劣らない設備をそなえた銭湯も増えてきて、まさに群雄割拠の様相を呈している。

1日ゆっくり「ヨコヤマユーランド鶴見」

鶴見

ヨコヤマユーランド外観

 ヨコヤマユーランド鶴見の支配人・大和英夫さんは、自社の特徴を次のように語る。

「ヨコヤマユーランド鶴見の特徴は、天然温泉であることと熱いサウナ、冷たい水風呂。それを目当てに遠方から来られるお客様も多い。また、カラオケや仮眠室もあり、1日中ゆっくりすごせる施設として親しまれています」

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ヨコヤマユーランドの男性浴場

 露天風呂で出会った82歳の女性は「孫が小さい頃は、潮干狩りの帰りによくこのお風呂に一緒に来たものよ。もう孫はママになったけどね。ここに来ると、今でもいろんなことを思い出すわ」と目を細めて懐かしんだ。

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