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「アフターピル」が薬局での販売検討へ。男も知るべき避妊知識を医師に聞く

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正しく服用すれば、ほぼ100%避妊できる

 ここで簡単に妊娠の仕組みについてお話しします。こちらも男性のほうは既婚者でも知らない人がほとんどかと思いますが、そもそも妊娠が成立するには「射精」「排卵」「受精」「受精卵の発育」「着床」「着床後の胚(はい)発達」の6つのプロセスがあります。

 1回で放出された精子は1億個以上あり、子宮頸管(しきゅうけいかん)と子宮を通って卵管へと進み、排卵された卵子を待ち受けます。卵巣から飛び出してきた卵子と精子が合体して受精卵となり、受精した卵(受精胚)は細胞分裂を繰り返しながら卵管から子宮に向かいます。

 やがてホルモンの影響でふかふかのベッドのような状態の子宮内膜に着床します。そこで受精胚が成長して赤ちゃんが育つのです。ピルは受精胚が子宮内膜に着床しにくい状態にするのです

 先に述べたように受精卵が着床するためには厚くて柔らかな子宮内膜が必要ですが、ピルを服用すると子宮内膜が十分な厚さにならないので、受精卵が着床しにくくなるのです。そのほか、子宮頸管粘膜も変化させて精子の侵入を防ぎます。ピルは、「太る」「副作用が怖い」などの先入観から日本では敬遠されがちですが、欧米では、「女性の意思で妊娠をコントロールできる避妊法」として広く認知されており、正しく服用すれば、ほぼ100%避妊できます

 現在日本で使用できる避妊法の中でもっとも信頼のできる方法です。

アフターピルが薬局でも購入できるように

薬を飲む女性

 ピルは性交前に飲む薬ですが、性交後でも避妊できる薬があります。それが2011年から日本でも発売されるようになった「アフターピル」と呼ばれる緊急避妊薬です。避妊に失敗して望まない妊娠の恐れがあるときにやむを得ず使うもので、多量の女性ホルモンを接種することで、受精卵の子宮内膜への着床を防ぎ、排卵を遅らせるなどして、妊娠を回避させます

 国内で販売されているのは、ジェネリックを含めて4種類ありますが、いずれも医師の処方箋が必要です。国内初の緊急避妊薬は性交後72時間以内に飲むことで92%、48時間以内で98%、24時間以内で99%の避妊効果があるとされています。

 なお、2020年10月8日の政府会議で、薬局で処方箋なしでも購入できるようにする旨、方針が示されています。72時間を過ぎた後でも、120時間まで服用できるものもあります。

 誰もが起きるわけではありませんが、主な副作用として、吐き気、嘔吐(おうと)、頭痛、月経以外の出血や月経周期の乱れなどが報告されています。もしもパートナーが服用するとき、男性はそばでサポートしてあげてください。また、この薬はあくまでも緊急避妊薬であり、頻繁に使用するものではないことを忘れないでください。

<TEXT/性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長 尾上泰彦>

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。1969年日本大学医学部卒。厚生労働省のHIV研究に協力するなど、わが国における性感染症予防・治療を牽引している。講演会や研究会を開催するほか、雑誌をはじめとするメディアへも積極的に寄稿

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