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「アフターピル」が薬局での販売検討へ。男も知るべき避妊知識を医師に聞く

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 若い男性は性的なことについては興味津々ですが、その一方で、パートナーの身を守る「ピル」についてはどんな知識を持っているでしょうか? はっきり言って、「服用しておけば妊娠する可能性がなくなる……」くらいの印象かもしれません。とはいえ、今の御時世では男性も正しい知識を身につけておいて損はないはずです。

口を押さえる女性

画像はイメージです(以下同じ)

 今回は「男性でも知っておくべきピルの知識」について性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」の尾上泰彦院長に解説してもらいます。

※本記事は書籍『性感染症 プライベートゾーンの怖い医学』の一部抜粋です。

ピルを飲んでおけば妊娠の心配はない?

尾上泰彦院長

尾上泰彦院長

 ピルさえ飲んでいればコンドームはいらない、と思い込んでいる人が増えているのは困ったことです。コンドームには性感染症から身を守る「鎧」の役割があるのですが……。ある女性のお話です。彼女は22歳のとき、ものすごくセックスが上手な男性と出会ったそうです。

「彼は自分の欲求をコントロールできる人。だからコンドームなしでやっても安心だったの。一度体験すると、私もそのほうが気持ちよくて……」。それ以降、出会った彼氏はすべて「私、コンドームなしが好きなの」というこの女性の言葉に大喜びで、コンドームをつけることはなかったと言います。

 彼女の言い分はこうです。「ピルを飲んでいるから、妊娠の心配もないし、彼も喜んでくれる。私も彼の体温を感じられて気持ちいい。いいことずくめでしょ?」。

 それに対して私はこう言いました。「それはマズイですよ。避妊のためにピルを使うのは、とてもいいことです。でも、ピルでは性感染症は防げません。セックスするときは必ずコンドームを使うべきです。コンドーム使用の目的は、避妊だけではないですからね」。

男が知らない「避妊薬」のメカニズム

性感染症 プライベートゾーンの怖い医学

『性感染症 プライベートゾーンの怖い医学』(尾上 泰彦、KADOKAWA)

 私の言葉に何か思い当たることがあるのか、彼女は押し黙ってしまいました。私は彼女のように性行動が盛んな方には、ピルとコンドームを併用するようにアドバイスしています

 男性の方はコンドームについては詳しいかもしれませんが、ピルについては知らない方がほとんどです。なので、そのときピルがどのような仕組みで避妊を導いているかを説明し、性感染症予防にはコンドームが必要であることを話すよう心がけています。

 ピルは排卵や生理を調整するための2つの女性ホルモン(エストロゲン=卵胞ホルモンとプロゲステロン=黄体ホルモン)を含む製剤です。ピルに含まれるホルモンと卵巣でつくられるものはほぼ同じ構造なので、服用していると、脳は「ホルモンが分泌されている」と勘違いし、排卵指令を出さなくなります。

 その結果、排卵がストップして避妊ができます。排卵が止まるといっても服用している間だけで、服用をやめれば短期間で排卵が再開し、卵巣や卵の性質には影響を及ぼしません。ピルを服用したからといって妊娠する機能がなくなるのではなく、あくまで脳に妊娠したと錯覚させるのです

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性感染症 プライベートゾーンの怖い医学

性感染症 プライベートゾーンの怖い医学

ここ30年余りで簡単には治療できない性感染症が増えている。その恐ろしい現実を知り、予防法を学び、プライベートゾーン(水着で隠れる部分)を大切にすることは、感染症から身を守る術を学ぶことでもある

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