かつや、マクドナルド…コロナでも収益アップした飲食店の秘密
あの店がコロナ禍でも収益がアップしたワケ
「第3の理由」は、各店の価格競争による体力の消耗と収益の低下です。世の中が外食することに消極的になるなか、インバウンドも含めて集客そのものが激減しているので、薄利多売を狙っても収益性は極めて低くなります。こうした3つの深刻な問題を抱えていても、店のデザインを変えることで収益を上げることが可能です。
コロナ禍でつぶれる店が増えている一方、収益が大幅にアップした店もあります。特に顕著だったのが「マクドナルド」と「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」です。いずれも家庭でのテイクアウト需要が高まるなか、ファミリー向けのテイクアウト商品を前面に打ち出すことで、ファミリーマーケットに支持されたことが勝因です。
有名なファストフードチェーンだから、たまたまコロナ特需の恩恵にあずかったのだろうと思われるかもしれませんが、有名というだけで特需になることはありません。マクドナルドとKFCの収益が上がったのは、店名に紐づいて、「テイクアウトに便利」「なじみのある味で安心」「リーズナブル」というイメージを、お客さまが抱いていたからです。
マクドナルドは普段から子ども向けのセット商品やサービスを打ち出すことで、子ども時代からマクドナルドに対する愛着を刷り込むマーケティング戦略を行っています。自粛中にマクドナルドのハンバーガー&ポテトのセットが食べたくて号泣している幼児の動画が海外のサイトで話題になりましたが、まさに刷り込みマーケティングの顕著な例といえるでしょう。
清潔感や衛生感を重視した「かつや」の勝因
一方、KFCはファストフードの中では割高なイメージがありますが、ワンコインで買えるお得なセット商品を打ち出すことで需要に拍車をかけました。さらに、「今日、ケンタッキーにしない?」というキャッチフレーズをCMで流し、ファミリー層に訴求したことも功を奏したといえます。
単に名前の知れたグローバルチェーンだから需要が伸びたわけではなく、お客さまのニーズに照準を合わせた企業努力のたまものなのです。
「かつや」は2020年7月の業績は前年比で約107%となりました。テイクアウトメニューを急遽増やしたこともありますが、私は「かつや」の内装デザインの影響があると考えています。「かつや」はおしゃれな素材をあえて使わず、清掃しやすいツルっとした素材を使った内装デザインにしているため、揚げ物を扱っているにもかかわらず店内はいつも清潔に保たれています。
おしゃれなデザインより、清潔感や衛生感を重視しているのです。コロナ禍のもとでは、お客さまは飲食店に対し「ておしゃれ」よりも「清潔感」や「衛生感」を求めます。「かつや」のようにお客さまから「清潔な店」というイメージが根付いている店は、それだけで大きな強みになるのです。