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勉強についていけない。「知的ハンディを抱えた子ども」の実像

学び

経済面、就労面などで支援が必要に

――こういう子どもたちに支援の手が届かないまま、大人になってしまうとどうなってしまうのでしょうか?

宮口:大人になってからも社会参加の制限などがあり、経済面や就労面などさまざまな領域での支援の必要性も生じてきます。しかし、こうした人たちは、周囲から「境界知能」が原因でそうした課題が発生していることに気づかれにくいので、支援を受けることはほとんどありません。

――原因がわからないままに悩みや課題だけが募ってしまうわけですね。

宮口:そうですね。現在、多くの学校では、子どもの発達や学習の遅れ、発達障害、粗暴行為、親の不適切養育などいろんな課題が山積みとなり学校の先生たちはいつも奮闘されておられます。また、保護者の方も目の前の不器用な子どもに対して、「どう対応したらよいのだろうか」と思い悩むケースも多いのではないでしょうか。

「キレて暴れる子ども」にも、さまざまな背景がある

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――「うちの子どもも、もしかしたら境界知能かもしれない」と思う親御さんもいると思うのですが、どのような点に注意して子どもをみていけばいいしょうか?

宮口:不器用な子どもたちは皆異なった特性をもっていますが、子どもが困っている課題はいくつかの共通点があります。それらを分類すると、大きく次の3つの課題に分かれます。

 まず1つ目は「社会面」です。これは、考え方、感情、行動のどれか、もしくは複数に課題があり、社会活動において何かしら課題が生じているという場合です。2つ目は「学習面」です。具体的には、集中できない、勉強についていけないなど、なんらかの課題が学習面に生じている場合。3つ目は、「身体面」です。運動が苦手、手先が不器用な子どもなどが該当しますね。

――具体的には、どんなケースが考えられるのでしょうか?

宮口:たとえば、「すぐにキレて暴れる」という特性を持った子どもを例に挙げて考えてみましょう。この子どもは、おそらく1つ目の「社会面」における行動について課題があると考えられます。子どもが暴れる背景には“怒り”という「感情」があるとします。その“怒り”の原因には「自分を馬鹿にされた」といった「考え方」がある。

 では、どうして子どもは「馬鹿にされた」と考えてしまうのでしょうか。子どもが「馬鹿にされた」と考える理由の1つにあるのは、その子どもの自信のなさですね。自信がないと、どうしても被害的な思考に陥ってしまい、他者から何かされても「また馬鹿にしやがって」といった考えに至りやすいのです。

境界知能とグレーゾーンの子どもたち

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