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コロナ下でも攻める「アパホテル」、社員の年収は高いのか?

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有価証券報告書などから見える現場の声

 では、現場の雰囲気や働きやすさはどうでしょうか。今回は有価証券報告書の情報を使うことができないので、採用情報などの公式サイトの情報・ニュースなどからその姿に迫っていければと思います。

 まず、給与水準については「採用情報サイト」に記載されていたので、こちらをもとに、同業他社との比較を行います。新卒(初任給)が月給222,630円~272,630円+諸手当、中途採用が月給20万~30万円となっています。賞与が年2回、各1か月分と仮定すると、月収30万円の人で想定年収は約420万円

 有価証券報告書で確認できた限りで、同業他社の平均年収と比較すると、東横インは375万円(平均年齢33歳2ケ月、臨時従業員除く、有価証券報告書より)、共立メンテナンス(ドーミーインブランド)は455万円 (平均年齢33.1歳、正社員のみ、有価証券報告書より)。したがって、アパグループの給与水準は、両者の中間に位置し、とびぬけて高くも、安くもないということがわかります。正直、絶妙な設定だと感じました。

アパグループの過去の不祥事は…?

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※画像はイメージです

 続いて、過去の係争や不祥事についても調べてみました。主なものとして2点ご紹介します。

 まず、2007年1月25日にアパグループ所有の京都市の2棟のホテルにおける構造計算書の偽装等及び耐震性の不足が発覚した件が挙げられます(※国土交通省HPより)。この指摘を受けて、アパホテルは同日に記者会見を開き、謝罪と初期対応(営業の停止・予約の振り替え)について公表しています。公的機関からの指摘と「同じ日」に記者会見を開くというのは初動の判断が早く、適切であることを示す根拠であると言えます。

 さらに、2棟に対して改修工事を開始し、同年3月末には、指摘対象のホテルも耐震補強が完了したと認められ、2棟とも営業再開しました。どんな企業も時には過ちを犯すことがありますが、謝罪の迅速さと事後対応の的確さで早期に収束させることができることを示す良い事例だと思います。

 また、アパホテルは、2013年に赤坂の土地の取得をめぐって、地面師の被害にあったこともあります(被害額は12億円)。ただし、被害額は当期利益(179億円:平成27年11月期)に対してあまり大きくなく、経営上は大きな痛手にはなっていないと想像されます。また、アパグループは変形地などの「扱いづらい土地」を周辺の地価と比べて安価に取得することで効率的なホテル建設を実現してきているため、ある程度はそのリスクも織り込み済みでしょう。

各部屋に置いてある代表の著書がスキャンダルに

 有名なスキャンダルとしては、2017年、アパホテルの各部屋に置かれている元谷代表の著書(ペンネーム)『本当の日本の歴史 理論近現代史』が、中国で炎上してボイコットに発展したことがあります。

 同書には「南京虐殺はでっちあげ」「日中戦争はコミンテルンの陰謀」などと書かれ、日本でも“ネトウヨ本”だと批判する人は少なくありません。元谷代表はもともと超保守論壇のスポンサーで、前述のとおり安倍総理とも親密。同社HPには、上記の主張が書かれたリリースが今もあり、同書を各部屋に置き続けると宣言しています。

 なお、アパグループに関連した残業時間やパワハラなど労働問題の訴訟は特に見つかりませんでした。

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