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日本でもTikTokが禁止に?本当に“中華製スパイアプリ”なのか

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私たちが“中国製SNS”を使う道義的責任

TikTok

 それでは、我々がTikTokを使うことに問題はあるのか。情報漏洩のリスクに関しては、他の平均的なスマホアプリと同程度か、少し悪いくらいだと予測する。

「TikTokを見ていると中国共産党に洗脳される」なんて心配も無用である。ただし、言論の自由に照らし合わせて、TikTokが「素晴らしいSNS」だとは言えないというのが筆者の私見である。

 残念ながら中国の市民には言論の自由がなく、習近平国家主席を揶揄することさえできない。一国二制度を謳い、言論の自由が認められてきたはずの香港でも、デモ隊への弾圧が始まった。中国本土でサービスを展開している以上、TikTokは中国政府の意向を無視できない。我々がユーザーとしてTikTokを使い続けていると、そういう不自由なプラットフォームに利益を与え、押し上げてしまうことになる。

 だから自由を望む中国人に対しては、申し訳ないことをしているのだと思う。ごく個人的には、中国製の電子部品や食品を買うことに抵抗はないが、中国本土に根ざしたSNSを積極的に使おうとは思わない

TikTokはなくなるの?

 では果たして、政治の意向でTikTokを「なくす」ことが可能なのだろうか。TikTokを排除できるのは、第一義的にはAppleやGoogleなど、アプリストアを運営する企業である。これらの企業がTikTokを「ユーザーに害をなすアプリ」だと判断してリジェクト(拒絶)すれば、TikTokのサービスは段階的に利用できなくなる。

 しかし、スパイ行為の証拠がないものをリジェクトするのはフェアではない。特定の国で開発されたことを理由にアプリの審査が通らないとなると、その影響は甚大で、業界全体が萎縮してしまう

 したがって、AppleにしてもGoogleにしても、現時点でTikTokをリジェクトする考えは持っていないはずだ。そうなると各国が立法行為を経て規制することになるが、現時点では「TikTokがスパイ行為をしていた」と判断できるまでの証拠はなく、名指しで禁止するのは公正ではない。
 
 何よりも、“中国製”という理由だけで製品を排除するのは、自由社会の商慣習に反している。したがって「TikTokがなくなる」というのは、普通に考えればありえない話だ。他のアプリを含め、「個人情報の収集範囲を今より制限する」という法律を作るのが、誰にとってもベストな落とし所だと思う。

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