コロナ禍で「無印良品」米子会社が破綻…国内事業の将来は?
海外の各エリアで明暗が分かれる
まずセグメント別業績推移のデータについて、現在のセグメント構成に切り替わった2015年2月期~2020年8月期までの範囲でグラフ化しました。無印良品の場合、地域別のセグメント分けになっているので「どのエリアがどういう状況だったのか」が理解しやすい構造になっています。
売上の大きさは、国内>東アジア>欧米>西南アジア・オセアニアの順で長らく推移していることが確認できます。なお、この区分が指しているエリアは下記の通りです。
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国内:日本
東アジア:中国・香港・台湾・韓国
欧米:アメリカ・カナダ・ヨーロッパ諸国
西南アジア・オセアニア:インド・オーストラリア・東南アジア・中東
(※欧米、西南アジア・オセアニアエリアは対象国が多いので一部まとめています)
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続いて、営業利益について同様に確認します。国内および東アジア(中国・香港・台湾・韓国)は2020年2月期(2020年2月末)まで安定的に黒字を出していましたが、欧米地域は2016年2月期に赤字転落して以降、赤字事業となっています。また、西南アジア・オセアニアは2020年2月期に赤字転落しています。
そして、2020年8月期第1四半期においては、日本も含めて、東アジア地域以外は軒並み赤字となりました。西南アジア・オセアニア地域の2020年2月期の営業赤字は「物流費等の増加」「新規出店や改装にかかる経費が先行したこと」と説明されており 、一時的なものであると理解できそうです。
アメリカで再生手続き申請に至るまで
一方、欧米地域についての決算短信は、2016年2月期・2017年2月期までは欧州が不調で、アメリカは好調だったものの、2018年2月期に欧州が回復に転じた時に、アメリカでの新規出店・店舗改装が遅延し、収益が悪化しています。
2019年2月期には欧州で黒字化を達成したものの、アメリカ側のコストが増加し、セグメント赤字も継続しました。そして、2020年2月期には欧米セグメントにて、さらに損失を増やす結果となりました。
もともとアメリカは2019年2月期から業績が思わしくなかったために、新型コロナウイルスによる全米の店舗営業停止に耐えきることができなかったようです。その結果、7月10日(現地時間)付けでアメリカ子会社の再生手続きを申請することとなりました。
ただし、プレスリリースにもある通り「再生手続き」なので、完全な事業撤退は想定しているわけではなく、今後も可能な限りアメリカでの事業再建の道を探るでしょう。