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新社会人よ『半沢直樹』を“おっさんの話”と一蹴するなかれ/常見陽平

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総集編は高視聴率を記録

 劇中で半沢は幾度となく上層部の思惑に振り回され、新シリーズでは子会社・東京セントラル証券にいわば「左遷」されたところから物語はスタートするが、どんな苦境にあっても「働けているだけマシ」と一蹴されてしまうのではないかと気がかりだった。

 しかし、新シリーズ放映を目前に控えて2週にわたり放映された前シリーズの特別総集編は前編の視聴率が13.0%で、後編が14.8%と好評だった。映像配信サービスが充実した今となっても、テレビドラマとしての輝きをみせつけてくれたのはやはり、作品自体の強さを物語っていた。

 作品の見所をひとくちに言っても、切り口がさまざまであるためなかなか悩ましいところでもある。ただ、『半沢直樹』については原作自体の面白さが土台にあるのは間違いない

日本的な企業の“強さ”を問う作品

通勤

 ドラマの原作は、池井戸潤による小説『オレたちバブル入行組』(講談社)と『オレたち花のバブル組』(講談社)である。

 出版された2004年前後はちょうど日本がバブル時代のツケを精算させられていた時期で、前年の2003年4月には、日経平均株価が7607円76銭に接近して当時としてのバブル後最安値を更新(※1)。同年6月にはりそなグループに2兆円に迫る公的資金が注入されるなど、社会は経済不安に包まれていた

 一方で、2004年には三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスが経営統合を図るなど銀行の再編が注目され、また、上場企業間のM&A(合併と買収)も目立ち、情勢を上手く切り取った内容はビジネスパーソンからも広く支持されていた。

 そして、時代が進んだ今でも『半沢直樹』に描かれた現実はいっそう加速している。劇中で描かれる親会社と子会社の対立はむしろ変容をみせて、かつては“左遷先”だったはずの子会社が台頭して、今では親会社の立場を喰うような事例もある。

 さらに、かつて日本がリードしていたはずの市場で中国やアメリカの企業が台頭する例も目立ち、日本的な組織の強さを問う機運が高まっている中では、本作がある種の道しるべになるのではないかと期待もしている。

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