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石油価格が「史上初のマイナス」ってどんな事態?日本人への影響は…

コラム

光熱費、医療費、教育費が無料だが

 一方、石油価格の低下は大きなリスクも伴う。例えば、UAEやカタール、バーレーンなどといった湾岸諸国は、その多くをオイルマネーに依存している。

 筆者も2年前に仕事でカタールを訪れたが、首都ドーハにあるハマド国際空港の洗練さ、街の治安の良さ、社会福祉制度などには驚かされた。

 また、その際はカタール航空のビジネスクラスを利用したが、世界一のビジネスクラスとも言われるように、食事やサービスなどはJALやANAよりワンランク上で、機内からもリッチな産油国の匂いは感じられた。ちなみに先行きは不透明だが、2022年にはサッカーのワールドカップも開催される予定だ。

 カタールには所得税や消費税などがなく、電気や水道などの光熱費、病院などの医療費、幼稚園から大学までの教育費などが全て無料で、カタール国民1人あたりのGDPも日本とは比較にならない。だが、これらは莫大なオイルマネーによる成功なのだ。

オイルマネーが下落すると…

カタール航空

 オイルマネーによる潤いがあらゆる所に漂っているが、その下落が長期間に渡って続くと、今までのような潤った生活はできなくなる。

 他の国々と同じように、税金を払い、医療費や教育費も一定額を支払うことになるだろうが、それに反発する国民のデモや暴動が激しくなるリスクもあるのだ。

 また、カタールではカタール国籍者より圧倒的多くの出稼ぎ労働者が働いているが(カタールの8割から9割)、彼らの給与は決して高くなく、衰退する石油産業のしわ寄せは、まず出稼ぎ労働者たちにやってくる。

 ビルや道路の建設に従事する出稼ぎ労働者の存在なしに、今のカタールの近代化はない。オイルマネーの長期的下落は、国家そのものの発展や繁栄に悪影響を及ぼす可能性もある。

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