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ストロング系、市販薬…身近な依存症。専門家が語る「最も深刻な薬は…」

暮らし

「違法薬物よりも、市販薬やアルコールのほうが危ない」

 長年専門医として依存症の治療に当たってきた国立精神・神経医療センター薬物依存研究部長の松本俊彦医師はそう指摘します。

松本俊彦

松本俊彦医師

 違法薬物は薬物乱用防止教育で「ダメ絶対!」なものとして教育されてきました。また槇原敬之、沢尻エリカ、田口淳之介(元KAT-TUN)など薬物使用した芸能人がセンセーショナルに報道されることもあります。

 前回のインタビューでは果たして何が正しいのか。違法薬物だけでなく、アルコールや市販薬など依存症につながるものとの向かい方について聞いた。後編となる今回は、日本での薬物報道や良い薬、悪い薬の見分け方を教えてもらった。

薬を使ってパフォーマンスが上がる?

――先日の槇原敬之さんにしろ、日本では正しい情報が伝えられるよりも、芸能人の逮捕などに合わせてキャンペーンのように違法薬物の問題が伝えられることが多いかと思います。

松本俊彦(以下、松本):冷静に考えれば、自分たちが学校教育で学んだ『ダメ。ゼッタイ。』という教育が嘘なんじゃないかと気が付くはずです。例えば高知東生さんにしてもピエール瀧さん、沢尻エリカさんにしても、ポスターに出てくるゾンビやモンスターみたいな姿とは全然違うでしょう。

「薬を使ってパフォーマンスが上がるのはドーピングなんじゃないか?」という意見もありますが、実際には上がらないどころか、むしろ低下してしまって、なかにはめちゃくちゃになってしまう人もいます。薬を使ってパフォーマンスが改善するなんて嘘をいう方が、かえって子どもや若者の好奇心を刺激してしまうでしょう。

 それに薬がドーピングなら、我々の外来に来る人すべてが才能のある人たちであるはずですが、そんなことはありません。才能がある人もいれば、才能がない人もいます。

 だから、なぜ「薬でドーピング」のような発想が出てくるのか、疑問です。ただ、人間というのは、日々のうまくいかないことに対して“仮想敵”をどこかで作りたい。その点、薬物は敵にはしやすいのではないでしょうか。

――実際に薬物が敵になってしまった事例はあるのですか?

松本:政治家が薬物の厳罰化を唱えると支持率が上がるというのも有名な話です。フィリピンのドゥテルテ大統領もそうですし、War on drugs(麻薬戦争)といって薬物戦争を始めたアメリカのニクソン大統領もそうです。ベトナム反戦運動で下がった支持率が、たちまち回復し、もう一期大統領ができた。

 そういった政治の在り方に我々がまんまと乗せられているところもあるのではないかと思っています。

国民に正しい情報が伝わらない悪循環

槇原敬之

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――それはメディアが作り出す世間の空気にも問題があるのでしょうか?

松本:テレビなどメディアも「薬物の恐ろしさ!」「薬物が蔓延している!」といって危機感をあおると数字(視聴率やPV)が上がるでしょう。最近だとコロナウイルスの関連情報なんかもそうですよね。たとえば、「一大事です、トイレットペーパーが品切れ!」とか。

 危機感をあおったり、スーパーでトイレットペーパーが無くなっている絵を流したりする。同じようにして薬物の問題も一大エンターテインメントにされています。

 しかも、取材が来る前に、すでに出来上がった構図があり、そこに落とし込もうとするので、恥をかきたくない、嫌な使い方をされたくない良質な専門家は取材を断ってしまいます。結局、ワイドショーに出演してコメントするのは、ずぶの素人か、専門家といってもかなりあやしい来歴の人となってしまいます。

 そしてますます国民に正しい情報が伝わらないという悪循環も起こる。これは我々も反省しているところです。

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