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元電通マンが「職場にも美味しいパンを!」の思いで起業するまで

ビジネス

その地域に根ざしたブランドを作る

――スタートアップの企業は東京に集中しているイメージがあります。なぜ、群馬県という地方で始めようと思ったのか、その理由を教えてください。

矢野:先ほどお話しした僕が雇用したいと思っていた人は、地方在住だったり、東京などの都心に比べて得られる情報が少ない方々だったんです。そこで地方で事業をやろうと決意したのですが、一方でその地域でやる必然性がない事業はうまくはいかないだろうなとも考えていました。

 それは、群馬桐生市のNPOに在籍した際から感じていました。繊維業が盛んな街で、その隣町の太田市にはスバルの工場があります。製造拠点が中国などの他のアジアに移転していくのを見ていたのですが、経済合理的な観点からも僕の中では服や車を国内で作らなければならない理由がなく、当然のことだと思っていました。

 そのような中で、食に関してはやはり水や衛生面が優れていることから日本国内でやる価値がある。さらに地方であるところでいうと、おいしい水や特産品などを使うことで、その地域に根ざしたブランドを作りやすいという考えもありました。

感動するほどおいしいパンに出会った

パンフォーユー

同社で扱っているパン(提供/パンフォーユー)

――そのような理由で地方を選ばれ、食品の事業を始められたのは納得できます。食品の中でもパンを選んだのはなぜでしょうか?

矢野:たまたま地元桐生市のパン屋さんでおいしいパンに出合ったんです。僕はずっと外食が多かったんですけども、実はそれまでに感動するほどおいしいパンに出合ったことがなかったんです。

「パンってこんなにおいしいんだ。でもこの価値を知っている人って少ないな」と思っていろいろ調べていくと、パン市場が伸びているということが分かりました。ここにかなり需給のギャップがあり、ビジネスチャンスがあるのではと思ったのがきっかけです。

――そんなきっかけで始めたパンの事業。地方創生に力を入れているとのことですが、具体的にはどのような形で地方のパン屋さんの力になっているのかを教えてください。

矢野:実は店頭販売をせずに、弊社だけにパンを作って卸しているパン屋さんもあります。そうなってくると住む場所にとらわれずに仕事ができるというメリットがまずあります。

 今、クラウドソーシングなどで場所にとらわれずに仕事をして生活をするような経済圏が生まれつつあります。でも僕はまだその分野は、知的労働における業務が多いと感じています。在宅でいい商品を作り、かつ自分のスケジュールに合わせて展開するというパターンはまだまだないと思うので、ランサーズに続く新しい地方での働き方になってくれたらいいなと考えています。

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