面接で「短所を教えてください」の質問にどう答えるべきか?
「好き」視点でなく「メリット」視点で
ほかにも求職者と企業の認識に開きがあると感じることはあります。求職者は仕事を「好き」や「やりたい」という感情で選んでいる一方、企業は求職者に「仕事を辞めない理由」を求めています。
企業が人を雇うと、入社後しばらくは戦力にならず、かえって教育コストや月々の人件費が出て行くばかりです。もし採用した若手人材がすぐに辞めてしまっては、そこでかけたコスト(投資)が回収できず赤字になってしまいます。だから、求職者が過去に短期離職していたり、大学を中退していれば、その点を根掘り葉掘り聞きたくなる心理はよくわかります。
では、面接官は「あなたがすぐには辞めない確証」をどこで得るのでしょうか。「メリット」と関係してきます。「あなたがその仕事をやることにどれだけのメリットを感じているか」です。
ここでいうメリットは「好きなことをやれる」といったような感情的なもの(移り変わりやすいもの)ではなく、「スキルが向上する」とか「将来的にニーズが伸びる」といったような事実(変わりづらいもの)のことです。その会社に勤めることに強いメリットを感じている人は、たとえつらいことがあっても、自分のために頑張るということです。
面接の志望動機を言うときにでよくやってしまうミスは、「御社のために頑張りたい」「理念に共感したので貢献したい」というものです。企業側のメリットをアピールしているわけですが、「自分のメリット」になっていないため、すぐには辞めない確証が弱いと判断されてしまいます。
ちょっと考えればわかりますが、自分の家族や親戚が経営している会社ならいざ知らず、昨日今日までまったくかかわりのなかった企業に、本気で貢献したいと思う人などはいるはずがありません。建前で言われた言葉は嘘っぽい、と思われてしまうのは当然です。それは見ず知らずの人に道端で急に「あなたに貢献したい」などと言われるのと大差ないのです。
要するに、面接では変に相手を持ち上げるようなアピールはせずに、自分にとっての働くメリットに絞り、アピールしたほうが効果的です。もし自分が志望する仕事に明確なメリットがないのであれば、他の仕事を選んだほうが、自分の人生にとっていいのではないか、と思います。
「仕事を好きになる」スキル
「好きな仕事」や「やりたい仕事」がわからないという求職者によく言うのは、「仕事を好きになれる人が最強」という言葉です。
大前提として、自分の好きなこと、やりたいことがある、というのは素晴らしいことです。自分の進む方向性(好き、やりたいこと)が定まっているため、それにつながる行動を取り続け、その人は生き生きと働くことができます。しかし、自分を含めて周りを見回してもらいたいのですが、本当に好きなことや、やりたいことがある人が一体どれだけいるでしょうか。大半の人は自分が熱中できるものなどもち合わせていいません。
しかし、「それでいい」のだと思います。やりたいことや好きなことを無理に考え出すのもおかしな話で、そういうものは自然と決まるもの。やりたいことが見つかるまで、目の前のことを頑張りながら、ただ待っていればいいのです。
社会人として活躍したり、楽しそうに仕事をしている人でも、必ずしも初めから好きなことを仕事にしているわけではないことに気づきます。そのほとんどは、何となくその仕事を始めて、一生懸命やっていたら専門性がついてきて、周りからも評価され、必要とされ、自分も楽しくなってきたという人が多いのではないでしょうか。
これこそ仕事の本質なのではないでしょうか。初めての就職でリスクを犯したくないと安全志向になってしまいがちですが、「最初の仕事選びは60点でいい」くらい気楽に考えて就職してみてはどうでしょう。
自分にとっての90点や100点の仕事は最初から手に入りませんし、どの仕事も悪いところばかりを見ていては、就職のタイミングがどんどん遅れてしまいます。悶々として、やりたいこと探しを何年も続けるくらいなら、60点の仕事でも就いてしまえば、職歴(キャリア)を積むことができるし、やがて能力や自信も手に入り、数年後にもっとよい選択肢を選ぶことができるようになります。