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松尾スズキ、監督・主演・脚本のR18映画「お行儀の悪い大人たちを見て」

 2018年に30周年を迎えた人気劇団「大人計画」主宰・松尾スズキさんが、監督、脚本、主演を務めた映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』が公開になりました。SNSで妻の浮気を知った主人公・海馬五郎が、とんでもない復讐を思いつき、暴走を始めるコメディです。

松尾スズキ

松尾スズキさん

“松尾スズキの集大成”とも称される本作を完成させた松尾さんに、本作にまつわるエピソードに始まり、「大人計画」を立ち上げた当時のことなどを聞きました。

女優陣の好演を引き出したシナリオの力

松尾スズキ

(C) 2019「108~海馬五郎の復讐と冒険~」製作委員会

――主人公は奥さんの浮気を疑って暴走していきますが、ヒントはどこから?

松尾スズキ(以下、松尾):ジェラシーって、本人のなかではすごく大きな炎になって暴れるシリアスな感情ですけど、傍から見てると滑稽だったりするんですよね。そこを喜劇にできたらいいんじゃないかと。

 海馬五郎も、普段、そんなに騒がしい人ではないんだけど、奥さんが浮気をしているんじゃないかと考えた途端に感情がダダ洩れの人間になってしまうという。可笑しくて悲しい主人公だなと。

――奥さん役の中山美穂さんをはじめ、五郎の妹役の坂井真紀さん、五郎の長年の友人で女優役の秋山菜津子さんと、女優陣が素晴らしかったです。中山美穂さんのあんな振り切った演技は初めて見ました。どう演出を?

松尾:演出というより、シナリオです。シナリオから、自分がどういう役割を持てばいいのかを読み込んできていただいたということに尽きます。僕が具体的にああしろこうしろと細かく演出を付けたわけではない。ただ撮影に入る前に、ほぼ全員で演技のリハーサルはしましたけどね。そこでセッションしながら作っていきました。あとはキャスティングも演出に含まれますね。秋山さんは完全にアテ書きですし。

――松尾さんのセリフは人によって刺さる箇所が違うと思いますが、秋山さんの終盤のセリフが大好きです。五郎に向かって「いつも下を向いていれば大丈夫。下を見れば私がいるから!」と、上ではなく、下を見ろと励ますという。

松尾:あそこはリハーサルをしながら思いついたんです。このセリフを足しますと。そもそもシナリオでは、あの場面に秋山さんはいない予定でしたから。でもやはり、あの役の末路として、ここにいて欲しいなと。そうやって変更も加えていきました。

体力の限界が来る前に主演作を残したい

松尾スズキ

――今回、監督、脚本に加えて主演も務めたのは、海馬という役は他の人にはできない、もしくは他の人には渡したくなかったからでしょうか?

松尾:もともと企画のスタートが、自分が主役の映画を撮ろうというところだったので。撮影に入ってから、こんなに大変だったのかと思いましたけどね(苦笑)。でもそうした大変さも含めて、自分の体力の限界が来る前に、自分の主演作を残しておきたいという思いがあったんです。

――「大人計画」を立ち上げたのは20代の頃ですが、当時、今のご自身の姿を想像できましたか?

松尾:まさか。映画を撮るとも思っていなかったですし。

――そのころは、とにかく自分の劇団を持って演劇をしていきたいという思いだった?

松尾:そうですね。とにかく劇団の動員を増やしたいという一心でしたね。