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台風で鉄道各社は大慌て…計画運休の混乱はなぜ起きた?

暮らし

首都圏の鉄道が混乱したもう2つの理由

②JR東日本が半ば断言したため

 JR東日本は台風15号が去ったあと、各線の安全確認を終えたのち、山手線などでは8時頃から運転を再開するものと見られていた。ところが、倒木や飛来物などの影響で、当初より大幅に遅れて営業運転を再開する羽目になった。また、私鉄や第3セクター鉄道も含む房総エリアの各線(東金線を除く)では、一部区間もしくは全線で運転再開のめどが立っていない。

 同社ホームページでは「8時頃より運転を再開いたします」と半ば断言したため、それを信じた人が多かったものと考えられる。

 例えば「安全確認で異常が確認されなかった場合、8時頃に本日の運転を開始する予定です」などといった文言のほうがわかりやすい。また、どの駅を何時頃に発車するのかといった詳細な案内があればなおよい。車両は車両基地のほか、留置線や引上線を構えた駅などで一夜を明かしているのだから。なんの変哲もない中間駅で列車を待っても、8時頃に到着する保証はない。

③平日の月曜日だった

 平日の月曜日は多くの企業にとって週の初め。前の週の金曜日に企業側が台風15号の動きがつかめず、通達が出せなかったことが考えられる。

JR東海の「急遽取りやめ」対応に疑問

東海道新幹線

日本の大動脈、東海道新幹線

 今回の計画運休に関し、東海道新幹線を管轄するJR東海の対応に疑問がある。9月7日、私(=筆者)は新大阪から始発の〈のぞみ244号〉東京行きに乗った際、車内の旅客情報案内装置(電光掲示板)では、台風15号接近に伴い、運休や列車の行先変更の可能性を示唆していた。

 その後、9月8日の18時頃から上下線合計50本を運休する発表をしていたが、台風の進路予想などを理由に、当日の14時20分に下りは15時以降、上りは16時以降、順次運転を取りやめることを発表したのだ。

 下り東京発の最終列車は19時00分発の〈のぞみ273号〉新大阪行きに対し、上り新大阪発東京行きの最終列車は16時40分発の〈のぞみ272号〉で、発表から2時間後に東京行き最終列車が発車するというのは、タイトであり、間に合わない恐れもある(ちなみに、17時以降の上り列車は名古屋まで運転)。

 急遽変更するぐらいなら、最初から正午を目安に東京―名古屋間の運転を打ち切ったほうがよかったのではないか。

計画運休の混乱を防ぐ3か条

①会社の始業時刻は臨機応変に

 政府はこれまで「働き方改革」「ゆう活」「プレミアムフライデー」を打ち出しているが、まったくと言っていいほど効果がない。計画運休による混乱が起こったのも、お勤めの方が会議や商談などで「会社を休むわけにはいかない」という、使命感の表れだと思う。

 それならば、台風で交通機関の混乱が予想されても、重要案件などの理由で出社しなければならない場合、企業側は「午前休業、午後始業」など、社員や非正規雇用者の安全を確保する、命を守る施策が必要ではないだろうか。

②パソコンやスマホに利用する鉄道事業者HPなどをブックマークする

 スマートフォンの普及で、情報がより一層容易に入手できる時代になったのだから、通勤・通学などで利用する鉄道事業者のHPなどをお気に入り(ブックマーク)登録してみよう。特に運行情報のページだけを登録すれば、すぐにアクセスできる。

 また、東京メトロでは路線別の運行情報をTwitter(参考:銀座線の運行情報)、東武鉄道では携帯電話向けの運行情報メールをそれぞれ配信している。出かける前に確認することで、最善の策がたてやすい。

③迷わず休む

 台風の接近で交通機関の影響が予想される場合、迷わず休むことが最善の策。自分の命を守るためにも“休む勇気”が必要だと思う。どんな生き物でも、たった1度しか生きられないのだから。

<取材・文・撮影/岸田法眼>

【参考資料】
・讀賣新聞「東海道新幹線、台風接近で最終繰り上げへ… 8日運休50本
・ハフポスト日本版「【台風15号が関東接近】東海道新幹線は午後3時以降、順次運休。最終列車の繰り上げ時間は?(最新状況)

レイルウェイ・ライター。「Yahoo! セカンドライフ」の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、ムック『鉄道のテクノロジー』(三栄書房)『鉄道ファン』(交友社)や、ウェブサイト「WEBRONZA」(朝日新聞社)などに執筆。また、好角家の側面を持つ。著書に『波瀾万丈の車両』『東武鉄道大追跡』(アルファベータブックス刊)がある

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