男性の育休が“わがまま”ではない理由。でも義務化には異論も
育児休業は「社会の問題でもある」
男性の育児休業というのは「家族に関わる時間を増やせ」といった、プライベートの話だけではないともいう。
「政府の広報や報道では、『育児休業を希望する男性が増えている』など、男性の育児休業を個人の希望の問題として打ち出す場合が多い。それはもちろんそうなんですが、同時に男性が当たり前に育児休業を取れるようになることは、日本の経済や社会が安定して続いていくための問題でもあるんです」
ひとつの例として、大嶋さんは、「働き手がいる2人以上の世帯の家計の状況」を紹介する。
「世帯主の勤め先収入は、ピークだった1997年から2017年にかけて、平均で月約7万円も減少しています。これに対して世帯主の配偶者女性の勤め先収入は、平均で月8000円しか増えていません。働く女性は増えていますが、家事・育児の負担が重すぎて、賃金はあまり増えていないのです。
ですが、男性も家事・育児に参加できたらどうでしょうか。女性が働く時間を増やしたり、責任のある仕事にチャレンジすることもできるでしょう。つまり、男性が育児休業を取れるようにすることは、日本の家計が長く安定していくためにも大切な一歩なんです」
先輩や知人に話を聞いてヒントをもらう
これは、日本社会が抱える喫緊の課題なのだ。とはいえ、育児休業の取得について、男性が具体的にできることは何があるのか。
「ちょっと面倒かもしれませんが、厚労省のサイトや会社の就業規則に目を通して、制度について調べてみることが第一歩です。育児休業について自分にはこういう権利があると知らなければ、そもそも前向きな話し合いもできません。
また、育児休業を取得した先輩や知人に話を聞いて、ヒントをもらうことも重要です。その上で男性のみなさんには、育児休業は個人のわがままではなく、家族の幸せのため、そして社会全体が良い方向に変化するための一歩であることを受け止めつつ、具体的なアクションを考えてもらいたいですね」
<取材・文/永田明輝>