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オリンパス事件を追いかけた映画監督が問う「日本メディアの忖度」

ビジネス

――たしかにどの業界を見ていても、自浄作用がきちんと働いていないという印象は強く感じる部分です。

山本:経済ジャーナリストのジョナサン・ソーブル氏が映画の中で上手くまとめていますが、バブル期からのいろいろな間違った決断やミスを、誰も責任を取りたくないからとバケツリレーを続けているのが今の日本なんです。

 オリンパス事件は経済事件というくくりのため実感が湧かないように思われがちですが、ああいった見ざる・聞かざる・言わざるという精神性がいろいろな方面でぶつかって、今こうして表面化してきている。これから東京オリンピックを迎える中で先を見据えてやっていくとしたら、もうちょっときちんと議論されるべきじゃないかと思うわけです。

今のメディアに真の意味でのスクープは存在しない

山本兵衛監督3

――実際は撮影したものの、映画では使われなかった要素はありますか。

山本:泣く泣くカットしたのは「メディアの在り方」についての部分です。阿部編集長やソーブル氏にも日本のメディアの状況を詳しく聞いていますし、ほかにも何人か大手新聞記者の方々にインタビューしました。

 ただ、編集の都合上、メディアに関するウェイトが増えてしまうとオリンパス事件のお話が完全に分断されてしまう。個人的にはそれでもやる価値があるのかな、と思っていましたが、そもそも海外の視聴者をまず念頭に置かないといけなかったので今回は断念しました。

――メディアの話はどういった内容を伝える予定だったんですか。

山本:たとえば、事件が明らかになった後、ジョナサン・ソーブル氏が日本の大手新聞会社の記者さんに聞いたらしいんですよ。「もしウッドフォード氏が僕ではなく、あなたのところに資料を持ってきたら、スクープできた?」って。

 するとその記者は「50:50」と答えたそうです。決定的な証拠がそろっている大きなスクープなのに、その新聞社はずいぶん消極的だと思いませんか? これは日本のメディアの現状を明確に表していると思うんです。

 ほかにも、別のジャーナリストは「今の日本で本来の意味でのジャーナリズムはほとんどできない」と言っていました。そのジャーナリストの方によると、基本的に調査報道と言われる時間とお金が掛かるスクープは、今の日本でほとんどされておらず、日本でのスクープの抜き方は、基本的にいつか発表されそうな情報があって、その情報源と親しい関係を築くことで先に入手して、どこよりも先にすっぱ抜くという方法であるとのことでした。つまり発表される前提のものなんですよ。

――それが日本メディアでいう「スクープ」なのですね。

山本:もちろんすっぱ抜くためのせめぎ合いは壮絶な競争になるそうです。でも、その情報源の方が顔をしかめるようなニュースが浮上したときは、その記事は書かない。記者からすれば、その情報源が怒って関係が断たれてしまうと、次の何か起きたら情報を回してもらえなくなるからです。

 つまりは自己規制、今で言うところの忖度をしている。実際にテレビを見ても、世界で報道されているニュースが日本で放送されていない例なんて腐るほどある。ウィキリークスだって「#MeToo」だって、日本の大手メディアではほとんど出てきません。あれって何故なの?って聞かれたら、どこかで誰かが忖度してるはずなんですよ。

 本来もっと問題にすべきニュースがあるはずなのに、チャンネルを回せばどこもかしこも不倫報道ばかり。そんなのよくある話じゃないですか。