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人間の食べ物は“麻薬”。イノシシが街に出没する深すぎる理由とは?

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 インターネット上で、イノシシが住宅街に現れて暴走している動画や写真を見かけたことはありませんか?

 最近では、都市にイノシシが現れて物を破壊したり、人に襲いかかったりする事件が増えており、死者も出るなど問題になっています。

イノシシ

※画像はイメージです

 5月8日放送の『クローズアップ現代+』(NHK)では「アーバン・イノシシ物語 ワシらが都会を目指すワケ」と題し、イノシシの現状とその背景について紹介されました。

近くに山がないから安心…ではないワケ

 イノシシの数は平成以降、3倍に増え、2016年には41の都道府県の市街地に出没が確認されています。さらに、半径20キロメートル以内に山地はなく、住宅や商業施設が混在している埼玉県ふじみ野市でも、小学生がイノシシに襲われ、両足に大怪我を負うという事件が発生しています。

 イノシシの身体能力は非常に高く、体重70キロの個体でも、2秒で時速24キロメートルまで加速することができます。突進された時の衝撃は、原付バイクに撥ねられた時の衝撃と同じものだそうです。運良く避けることができても、イノシシの牙は横に向かって生えていて、かすっただけでも深い裂傷を負ってしまうそうです。

 都会で遭遇するイノシシは、パニック状態になっていることも多く、農研機構研究員の江口祐輔さんは「慣れていない場所で、慣れていない人間に遭って、(イノシシの)気が動転してしまって、暴れまわってしまうことも考えられる」と番組の中で解説し、その危険性を指摘しています。

 さらに、イノシシの都市圏の出没は日本だけでなく、香港や韓国、ドイツやトルコなどでも同様の事例が報告されており、世界的な問題になっています。屋外だけでなく、屋内で暴れまわる事例も複数報告されており、被害も甚大なものとなっています。

イノシシにとって人間の食べ物は麻薬

果樹 木の実

 イノシシの市街地の進出の原因となっているのは、都市部への人口の集中と農業人口の減少です。これまで、里山がイノシシを山中に押し止めておく歯止めとなっていましたが、里山が衰退してしまったために、妨げるものがなくなってしまいました。さらに、耕作放棄地に植えられたままの果樹や木の実がエサになって、豊富に栄養を摂取したイノシシが繁殖を繰り返していることも、個体数増加の一因になっています。

 山中で増えすぎたイノシシは、新たな住処を探すために河川を伝って、都市部にやってきています。東京都近郊の荒川や多摩川沿いの河原に、イノシシの寝床らしきものが数多く発見されています。

 さらに、生ゴミを漁ることによって、自然界には存在しない高カロリーの人間の食物の味を覚えてしまいました。本来、木の根やミミズを食べていたイノシシにとっては格別のご馳走になってしまうのだそう。「人間の食べ物を一度でも食べてしまうと、麻薬のようにやめることができない、そういう状況に(イノシシが)陥ってしまいます」と兵庫県立大学の横山真弓教授が番組で語りました。

 さらに、人間は自分に危害を加える存在ではないと学習している個体もおり、食べ物を求めて、買い物帰りの人間に襲いかかってくるという事例も報告されています。イノシシが人を襲うというのは大きな問題ですが、「根底にあるのは社会構造の変化に他ならない」と番組では結論付けられていました。イノシシはある面では、人間社会の被害者と言えるでしょう。

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