JR西日本、新快速「有料座席」に乗車してみた。4つの課題点も
日中でも乗車率は4割。JR西日本も手応えを得たか
さくら夙川を通過すると、近くの夙川河川敷緑地は桜が満開。花見客が多く、楽しんでいる様子だ。
三ノ宮で白髪の男性が進行方向右側の空席に落ち着き、姫路までの乗車整理券を購入。神戸に到着すると、車掌の了解を得て、左側の席に移動した。どうやらJR東日本首都圏の普通列車用グリーン車と同様、席の移動は自由らしい。
山陽本線に入ると、立席の乗客がいなくなった。進行方向左側には大阪湾が見え、雄大な海、壮大な明石海峡大橋が車窓を彩る。須磨―朝霞間は“新快速の絶景区間”といえよう。
加古川を発車すると、Aシートの乗客は18人。乗車率約4割は「健闘」という言葉があてはまる。日中でこの数字なのだから、JR西日本も手応えを得たのではないだろうか。
Aシートに乗車してわかった今後の課題や注目点
Aシートは今後も増やしてほしいと願っている。今後の課題や注目点をあげておこう。
■自由席にするか、指定席に変更するか
冒頭で述べたとおり、米原方面列車の9号車は乗車率が高く、もしAシートを有料自由席のまま、運転区間を拡大にしたら、乗客は米原―大阪・姫路間といった、長距離乗車が中心なるものと考えられる。
30分程度の短距離利用客などに対応するためには、ホームなどに券売機を設置し、シートマップでお好きな席が選べるよう、指定席券として発売することも一考である。
■人員の確保
Aシートは専任車掌2人乗務していたが、今後増発されても人員を増やせるのかが気になるところ。乗務員になるには、ある程度の経験を積んでから試験を受け、合格しても、道はまだ切り開けない。
JR東日本首都圏の普通列車用グリーン車、京阪電気鉄道のプレミアムカーでは、専属のアテンダントを募集し、人員を確保した。こちらは雇用後、研修などを経てから現場に就く。
■新快速の新型車両導入
Aシートは既存車両の改造により投入されたが、将来は新型車両を導入するものと考えられる。新型車両だと、1から設計できるので、座席と側窓の位置が完全に一致、洗面所の設置など、快適性の向上が期待されよう。
■8両車のトイレ増設を
本題のAシートから外れるが、以前から気になっているのは、8両車のトイレが1号車のみということ。長距離乗車の場合、トイレがある車両、もしくは近い車両を選択する乗客がいると思う。もう1~2か所増設することで、乗客に安心感を与えるはずだ。
雄大な海・壮大な橋・天下の国宝を望む旅に
野洲から160.2キロに渡り快走を続けた新快速は、定刻通り14時02分、終点姫路8番のりばに到着。より快適、より充実した2時間03分だった。ちなみに、青春18きっぷ1日分の乗り継ぎだと、九州の小倉まで到達できる。
姫路で下車すると、1キロ先に天下の国宝、姫路城がそびえたつ。それを彩る神姫バスは、デジタル方向幕の「回送中です」が微笑ましい。在来線ホームの高架化で整備された21世紀の街なみと、古来の城が見事に融合し、“絵になる風景”に進化していた。天下泰平の世は、令和以降も続くであろう。
<取材・文・撮影/岸田法眼>