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日本人の性のテクニックは衰退の一途?考えられない昔の性事情

大衆文化は日本の恋愛観のあわせ鏡?

新谷先生:でも、現代の若い人たちはそうは思いませんよね。それは、太平洋戦争後にアメリカ文化の影響で、映画や歌謡曲における性の規制が次第に緩んでいったためでしょう。

 例えば、1968年に始まった大人気映画シリーズ『男はつらいよ』ではベットシーンがまだ描かれなかったのに対し、南こうせつの名曲「神田川」(1973)の歌詞では同棲する男女が描かれています。

――おニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」(1985)なんて、露骨に女子高生との行為をほのめかしていますし……。現在の若者の間では、むしろ早くに経験するほうがかっこいいというような意識がありますよね。

日本の性のテクニックは衰退の一途?

勉強する男子高校生

――最後に、現在の日本の性教育では、世界基準よりも内容が制限された「はどめ規定」が採用されているわけですが、なぜ義務教育では性に関して十分に教えてくれないのでしょう。

新谷先生:義務教育は、表向きかつ社会的に整えられたものだからです。対して現代社会において、性は個人的な秘め事だから。さらに、性の成長・関心には個人差があるので、学校のように一律教育の場で扱うには難しいトピックでもあります。

 他方では、地域のつながりの希薄化から、性のテクニックを教えてくれる大人が周りにいないことも、性知識の不足につながっているでしょう。テクニックとは、相手を喜ばせるためのもの=思いやりですから、社会にはあってしかるべきなのですが。明治以降の近代化の中で、日本は肉体的・精神的な性愛の思いやりが学びづらい社会になっていると言えるかもしれません。

 昔ながらの村社会では、地域の大人が若者に一貫して“女性を大事にしなさい”と教えていました。本来、日本の性教育の根幹には、思いやりがあったのです。

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 日本はアダルトビデオを筆頭に性的欲求を満たすための情報は溢れている一方で、性教育の面では世界的にハンデを負っていると言えるでしょう。けれど“相手への思いやり”という日本本来の性意識に立ち返ることで、男女がともに性を楽しめる社会に近づくことができるかもしれませんね。

<取材・文/岸澤美希>

新谷尚紀(しんたに・たかのり)
1948年広島県生。社会学博士(慶應義塾大学)。現職は、國學院大學文学部及び大学院教授。著書は『柳田民俗学の継承と発展』(吉川弘文館)など多数。

1994年生。國學院大學で民俗学を修めたのち、編集・ライターに。日本民俗学会所属。論文に「関東地方の屋敷神―ウジガミとイナリ」がある(『民俗伝承学の視点と方法』新谷尚紀編、吉川弘文館)

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