幻の卵料理は「黄身返し卵」だけじゃない?卵専門家が2つのレアなレシピをレクチャーします
卵料理といえば、ゆで卵や卵かけごはん、卵焼きや目玉焼きなど、ほとんどの人が作ったことがあり、食べたことがあるポピュラーなものが多い。そんな中、ほとんどの人が食べたことも作ったこともないようなレアな卵料理があるのをご存知だろうか。卵のスペシャリスト「五ツ星タマリエ」である児玉大介氏が、2つの卵料理をレシピと共に教えてくれた。ぜひ作ってみよう。
黄身と白身が反転!「黄身返し卵」
一つ目のレアな卵料理は「黄身返し卵」。見たことも聞いたこともない人も多いはず。一体、どのような料理なのか。
「ゆで卵といえば、中心に黄身、周りに白身があるのが当たり前ですが、黄身返し卵は黄身と白身が反転した状態の珍しいゆで卵です。これは『万宝料理秘密箱』という江戸時代の料理本『卵百珍』に記載されている卵料理で、当時はこの本のレシピを再現することはむずかしかったため、幻の料理といわれるようになったようです。
現代では、ストッキングを使えば黄身返し卵を作ることができます。成功する確率は100%ではなく、普通のゆで卵になったり、黄身と白身が混ざりすぎて白身が消えてしまったりすることもあるのはご愛嬌。ぜひチャレンジしてみてください」
「黄身返し卵」レシピ
【材料・道具】(1人分)
卵 1個
ストッキング 1足
輪ゴム 1個
セロハンテープ 適量
【作り方】
(1)常温の卵を用意する。(冷蔵庫に入れていたものは常温に戻す)
(2)殻の表面が結露していたらキッチンペーパーなどでふき取る。
(3)セロハンテープを十字に卵の殻へ貼る。
(4)ストッキングの中央付近で結び目を作り、卵を入れ、輪ゴムで固定する。
(5)ストッキングをぐるぐる回してねじれを作る。ねじれた両端を引っ張って、ぶんぶんゴマの要領で、卵を高速回転させる。やがてピチャッという音がする(卵黄膜が破れる音)ので、その後、2~3回同じ要領を繰り返す。
(6)水を張った鍋に、卵を優しく入れ、弱火で温める。沸騰し始めてから10分間、卵を箸などで転がしながら、弱火でゆでる。その後、火を止め、余熱で5分間ゆでる。
(7)氷水または流水で冷却したらできあがり。
●上手に作るポイント
・新鮮な卵を使う
「一般的にゆで卵を作る際、卵は賞味期限に近いものが好ましいといわれていますが、黄身返し卵では、できるだけ新鮮なもののほうが作りやすいです。濃厚な卵白が中心にきやすいからです」
・ピチャッと音がしてからも、さらに回す
「ピチャッと音がしてからも、さらに何回か回すことがポイントです。卵黄膜は破れていますが、まだ白身と黄身が反転していない可能性が高いからです」
・ヒビを入れるのはNG
「一般的にゆで卵を作る際、卵に少しヒビを入れると良いといわれます。炭酸ガスが抜けることで、剥きやすい卵になるといわれるからです。しかし黄身返し卵ではヒビを入れることは厳禁です。ヒビがあるとゆでている際に黄身があふれてくるからです」
これぞ本物のふわふわ!「たまごふわふわ」
続いては、「たまごふわふわ」という料理。可愛いネーミングに思わずほんわかしてしまうが、一体どんな料理なのか。
「たまごふわふわは、江戸時代に袋井宿で提供されていた卵料理で、静岡県の袋井市観光協会が地元の新名物として現代に再現・復活させました。江戸時代の文献『仙台下向日記』によると、袋井宿の大田脇本陣で宿泊客の朝食に出されていたようで、新選組の近藤勇の好物だったそうです。
材料は、卵とだし汁だけというシンプルなもの。ふわふわに仕上げた風味豊かな泡の食感が楽しめる卵料理です。自宅でも簡単に作ることができます。本場の味を堪能したい方は、袋井市まで遊びに行ってみてはいかがでしょうか。私も以前食べに行きました。お店ごとに特徴が違って楽しかったですよ」
「たまごふわふわ」レシピ
【材料】(1人分)
卵 1個
かつお出汁 200cc
薄口醤油 大さじ1
みりん 小さじ1
砂糖 少々
薬味(ねぎ等) 少々
【作り方】
(1)かつお出汁と薄口醤油と砂糖を混ぜ合わせ、すまし汁を作る。そして、180ccと20ccに分ける。
(2)鍋に180ccのすまし汁を入れ、蓋をして中火にかける。
(3)ボウルに卵、みりん、20ccのすまし汁を入れ、ハンドミキサーでクリーム状になるまで混ぜる。
(4)(2)が煮立ったら火を止め、鍋の縁から(3)を一気に流し入れ、蓋をして2~3分蒸らす。
(5)蓋を取り、薬味を載せたらできあがり。
●上手に作るポイント
「蒸らす時間が長すぎると泡が固くなります。泡の生(なま)に近い食感を楽しみたい方は、蒸らす時間を少なめに。しっかりした食感を楽しみたい方は、蒸らす時間を長めにすると良いでしょう」
どちらも伝統的な卵料理であり、レア感が高い料理といえる。自宅で手作りすればそれだけで楽しめるし、家族や友人にふるまえば盛り上がりそうだ。ぜひ試してみよう。
<取材・文/一ノ瀬聡子>
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【取材協力】
小学校の自由研究以来、生物(特に鳥・卵)が大好きに。名古屋大学で卵の研究に没頭し、卵に関する仕事がしたいという想いでキユーピーに入社。卵商品の製造や経営に従事し、現在はキユーピー株式会社研究開発本部にて、卵の研究に没頭中。
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