<漫画>「ペガサスは本当に飛ぶか」を検証…漫画家がゾワッとした広告の制作現場
日本を代表する広告代理店でコピーライターとして徐々に才能を開花させたにも関わらず、幼い頃の夢が再燃し、思い切って漫画の世界へ飛び込んだ、漫画家のうえはらけいたさん(@ueharakeita)。
「広告業界の物語を描いてほしい」という依頼が舞い込んだことで、念願だった広告業界漫画『ゾワワの神様』を描くチャンスが訪れる。この作品には、うえはらさんのどのような思いが込められているのか。前編・中編に続き、作者のうえはらさんのインタビューと共に、『ゾワワの神様』第8話~第12話を紹介する。
事実をもとに、漫画としての表現を模索
──作品に登場される人物はどれも個性豊かというか、近寄りがたいというか……。あと、セリフの鋭さも特徴だと思います。「言葉は万能ではない」「本気でモノづくりをやるなら、『恥ずかしい』は今日から禁句にしようや」など、突き刺さる言葉ばかり。これは、当時のことをメモなどされていたのですか?
うえはら:いえいえ。そういうことは一切していないんですよ。もっと言うと、どういう文脈で言われかを、あんまり覚えていない言葉も多いです。例えば、「恥ずかしいは言わない」っていうエピソードは、それほど重要な場面で言われたことではありません。
先輩との雑談で、ふと「この仕事、恥ずかしいっすよね」って口にしたあと、「まぁ、恥ずかしいけど、がんばろうや」程度の会話だったと思うんです。それを、漫画の表現に合わせて、どういうストーリーであれば、もっと伝わりやすく、刺さる表現になるだろうって考えていますね。
個性豊かなキャラの“正体”は…
──そういう心に残っている言葉を漫画に合わせてセリフに変えていると。では、どのセリフが最も印象的ですか?
うえはら:そうですね……。第9話で、「キミがひとりで描いた仮説が、いろいろな人の手が加わり意志になった」というのがあるんですね。これは、特定の誰に言われたというワケではなくて、いろんな人に、それぞれの表現で教わったように思うんです。この作品では、そうした「キーワードの種」を寄せ集め、自分なりの言葉として表現しているのですが、そうしたセリフという意味で印象に残っています。
──実体験はゼロではないけれど、キーワードをつなぎあわせる部分でかなりの想像力を駆使されているのですね。ということは、あのような個性豊かな方々も、うえはらさんの想像ですか?
うえはら:まったくゼロではないですよ。部署によっては、あれほどインパクトがある方もいますけどね(笑)。ただ、ノンフィクションではないので、ある程度は脚色で、物語に合致したキャラクター表現にはなっていると思います。