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「ひきこもりはメディアに殺された」元当事者が語る、報道の罪

コラム

 テレビや週刊誌でひきこもりに対するバッシングが止まらない。きっかけとなったのは、今年5月に川崎市の引きこもり傾向にあった男(51)が起こした「川崎20人殺傷事件」と、その4日後、東京都練馬区で元農林水産事務次官が起こした引きこもり長男の殺害事件だ。

ひきこもり

※画像はイメージです(以下同じ)

 こうした風潮に対し、危機感を抱くのは、自らもひきこもり経験があり、現在は「ひきこもり新聞」で編集長を務める木村ナオヒロ氏だ。ひきこもりに対する世間的イメージはどのように形成され、広まっていったのだろうか(以下、木村氏寄稿)。

変わらない「ひきこもり」への偏見

 ひきこもりは、犯罪予備軍というイメージとともに広まった。新潟少女監禁事件と西鉄バスジャック事件が起きたのは2000年。どちらの犯人もひきこもりとされ、凶悪な事件のイメージが「ひきこもり」に結びついてしまった。

 19年後、川崎の殺傷事件に続き、練馬で元農林水産事務次官が長男を殺害した。ここで再び、2つの事件が「ひきこもり」と結び付いた。しかし、事件はひきこもりが原因だったのだろうか?

 川崎の事件は無差別の通り魔事件であり、練馬の事件は家庭内暴力に苦しんだ父親による殺人事件だ。だとすれば、2つは本来、通り魔と家庭内暴力のカテゴリーでそれぞれ考えるべき問題だった。

 ひきこもりという事実は、中年男性、無職、ゲーム、マンガ、TVなどと同じように、事件の背景にあった無数の事実のひとつであって、直接的な原因とは言えない。川崎と練馬の事件をひきこもりに結び付けた報道は「TVを持っていた人が殺人事件を起こしました」と伝えるくらい雑なものだ。

作り上げられた「犯罪予備軍」のイメージ

 しかし、メディアはひきこもりの事件として扱った。根本匠厚労相が安易にひきこもりと事件を結び付けないように苦言を呈した後も、「暴発予備軍は100万人」という見出しが週刊誌には踊っていた。

 なぜ、事件が起きるたびに、ひきこもりが関連付けられてしまうのか。それは、ひきこもりに対する根深い偏見にある。今回の一連の報道は、犯罪予備軍という偏見が20年近く経っても変わらないことを明らかにするものだった。

 では、犯罪予備軍としてのイメージを作り上げたのは誰か? それは、ひきこもりを分かりやすい説明や視聴率に利用したメディアと、宣伝のためにひきこもり当事者をカメラの前に晒し続けた引き出し屋だ。メディアと引き出し屋によって、ひきこもりは、事件が起きるたびに危険な存在として取り上げられ、この過程で悪のイメージを持たれていった。

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