いくら読書をしてもプレゼンのスキルは身につかない理由
この時期、書店に行くと、ビジネス書が山ほど並んでいます。プレゼンの解説、コーチング、新入社員の心得など内容もさまざまです。しかし、人事・組織変革、能力開発のプロである山口博さんは「解説本を読むべきではない」と断言。その真意を聞きました
解説本を読んでもスキル発揮できない
普段、私は役員から新入社員まで各層のビジネスパーソンと、ビジネススキルを一層向上させる能力開発プログラムを実施している。参加者にプレゼンテーションやコーチング話法を披露していただくと、実はほとんどの人がビジネス書で学んだはずのことを実践できていない。
本人に聞いても「できているとは思えない」と言う。何冊も熟読して勉強してきたにもかかわらず、「実際にできているかというと自信がない」と言う人さえもいる。
例えば、プレゼンテーションの解説書には、「多数の聞き手に対しては、ジグザグ視線で見渡すようにするとよい」という意味の説明が書かれている。
それを実際に私の演習で披露してもらうと、確かにジグザグに視線を動かしていくが、ジグザグに動き続けて、まるで静止することを忘れたビデオ録画のように、見聞きする側からすると、落ち着かない車酔いをした気分になってしまう。
コーチングによるリーダーシップとは、相手が仮に部下や後輩であったとしても、相手の意見を傾聴しながらコミットメントを醸成していくプロセスで、トップダウンによる命令とは対極にある。しかし、私が実施するロールプレイング演習でコーチング話法を繰り出してもらっても、トップダウンの対話になってしまっている。
スキル発揮できなければ時間とコストは無駄
プレゼンテーションの解説書を何冊読んでも、コーチングの書籍をどれだけ熟読しても、実際に自分の話法、行動として再現することができなければ、意味がない。
むしろ、それにかけた時間とコストは無駄ということではないか。読んでわかったつもり、勉強して理解したつもりになっても言動で示すことができていなければ、ビジネス活動に役立ったとは言えないのだ。
むしろわかっていると勘違いした分、害すらある。ビジネス書など読まなければ、貪欲に話法や言動で身につけようという意欲を持ち続けていられたかもしれない。
実は、プレゼンテーションやコーチングの書籍など一冊も読まなかったとしても、そして、プレゼンテーションスキルやコーチングスキルの理論を一度も勉強しなかったとしても、グローバルスタンダードのプレゼンテーションスキルやコーチングスキルを発揮できるようになるための訓練がある。そして、それは1セット15分でできる訓練なのだ。