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「ゴルゴ13」が50年間、読者から圧倒的支持を集める理由

学び

「報酬は前払い」「依頼人とは二度と会わない」

 それは、今までのマンガの主人公にはなかったキャラでした。ストーリーも当時の世界情勢が色濃く反映されており、その裏でゴルゴが暗躍する設定が多く、1話ごとに舞台が世界中のさまざまな場所に変わるスケールの大きさも異色でした。

 言わば、誰もいないところにボールを打ったわけです。

 作品のなかでも、デューク東郷は狙撃成功率99%以上という仕事の遂行能力はもちろん、「報酬は前払い」「正体を明かさない依頼人の仕事は受けない」「依頼人とは二度と会わない」などのルールを徹底することで、自分の価値をより高めています。「自分マーケティング」に長けていたことがよくわかりますね。

その時々の世界情勢を取り入れる

自分マーケティング

『自分マーケティング――一点突破で「その他大勢」から抜け出す 』(川上徹也、祥伝社新書)

 2018年、『ゴルゴ13』は、何と連載50周年を迎えました。連載を続けるということは、作家の意志だけではできません。読者からの支持があり、出版社が継続して依頼し続けなければ達成できないものです。

 連載開始から20年は、アメリカとソビエト連邦の対立を中心とした東西冷戦の真っ只中でした。ストーリーも、その状況があるからこそ成立するような設定が多かった。

 ところが、1989年にベルリンの壁が壊され、1991年にソ連が崩壊して、冷戦は終結を迎えます。ストーリーの魅力が半減する可能性もありましたが、『ゴルゴ13』はそうなりませんでした。その時々の世界情勢を巧みに取り入れ、現在進行形で読者の支持を集め続けています。

 幹の部分はブレずに、時代に合わせて変わり続けなければ、支持を集め続けることはできません。『ゴルゴ13』という作品からも、デューク東郷という主人公の仕事ぶりからも、学ぶべきものは多い。もちろん「殺し」を見習うということではなく、その準備や方法をビジネスに生かすということですよ。念のため。

<TEXT/川上徹也>

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