石破首相初の日米首脳会談と今後の注目点【やさしいニュースワード解説】
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在京の大手メディアで取材記者歴30年、海外駐在経験もあるジャーナリストが時事ニュースをやさしく解説。今回は、「石破首相初の日米首脳会談と今後の注目点」です。
石破首相がトランプ大統領と初会談
石破首相が2月6日、訪米を行い、二期目をスタートさせたドナルド・トランプ大統領と初会談しました。 日本で新しい総理大臣が誕生したり、アメリカの大統領が交代したりする時に焦点となるのが、日米の首脳同士がいつ初めて会うのかという点です。アメリカは日本にとって唯一の同盟国であり、日米のトップが直接会って話をすることは大きな意味を持ちます。
石破首相の場合、トランプ氏の就任前に面会する機会を模索する動きもありましたが、結局はトランプ氏の正式就任後に、石破首相が忙しい国会日程の間を縫って訪米する形をとりました。トランプ大統領にとって、イスラエルのネタニヤフ首相に続いて面会する2番目の主要国の首脳となりました。
日米間の安全保障の枠組み維持を確認
日米の報道をみると、終始和やかな雰囲気で会談が行われた様子で、両首脳の表情も明るく、随所に笑顔が見られました。何を言い出すかわからないトランプ大統領だけに、日本の外交当局はあらゆる想定をしたとみられますが、いきなり無理な要求を突きつけられるといった強硬姿勢は表面的には見られませんでした。
以前、安倍元首相との間で良好な関係を築いていたトランプ大統領だけに、まずは日本との関係を重視する姿勢を示したとみることもできるでしょう。
外交面では、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて緊密に協力することや、日米安保条約第5条が日本の尖閣諸島の防衛に適用されることなど、これまで通り日米間の安全保障の枠組みが維持されることを確認できたことは日本にとって収穫だったといえます。
また石破首相は首脳会談で拉致問題の解決に向けた決意についても言及し、大統領から強い支持を得たとしています。
日本製鉄のUSスチール買収問題に注目
一方、経済面では、日米両国がビジネスの環境を整備して投資・雇用を拡大していくことや、日本が米国産液化天然ガス(LNG)の輸入を拡大することで合意しました。首脳会談前から注目されていた日本製鉄によるUSスチールの買収問題については、トランプ大統領は首脳会談後の記者会見で「買収でなく多額の投資」という考え方を示しました。
さらにその後、トランプ氏は「誰もUSスチールの株式の過半数を保有することはできない」とも述べています。これまで日本製鉄はUSスチールを買収する姿勢を変えていませんでしたが、今回の日米首脳会談を経て、取り巻く状況に変化が出てきています。
これに関連して、林官房長官は10日の記者会見で日本製鉄について「日米がウィン・ウィンになれるようなこれまでとはまったく異なる大胆な提案を検討していると承知している」と述べています。トランプ大統領の真意がどこにあるのか、また日本製鉄が今後どのように対応していくのかが注目されます。