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中国でも生成AIが熱い!国が情報を制限する特殊な事情とは?

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中国でも生成AIが熱い!国が情報を制限する特殊な事情とは?

「生成AI」と聞いて真っ先に思い浮かぶのはChatGPTではないでしょうか。ChatGPTが2022年11月に一般向けにリリースされて以降、世界各国で生成AIの開発に拍車がかかりました。もちろん、お隣の中国も例外ではなく、百度やアリババといった主要なテック企業が参入しています。この記事では、中国の生成AI事情についてお伝えします。

中国市場に特化した生成AI

ChatGPTがリリースされたのが2022年の11月。2024年現在、ChatGPTだけでなく、GoogleのGemini、AnthropicのClaude 3.5 Sonnetなど、多くの生成AIがしのぎを削り、性能は日進月歩で向上しています。

日本でも、Feloに代表されるように国産の生成AIが登場しました。一方、人口14億人を越えるお隣・中国の生成AIに関する話題は、あまり耳に入ってこない気もしますよね。実は、中国でも国家として生成AIの開発に力を入れています。

すでに、百度の「文心一言(ERNIE Bot)」、ファーウェイの「盤古Chat」、アリババの「通義千問(Tongyi Qianwen)」など、主要なテック企業が生成AIを開発し、一般向けに続々とリリースしています。特に中国市場向けに最適化されており、中国語の自然言語処理に強みを持っています。

国家の指導のもと開発が行われる中国の生成AI

JETROの「生成AIサービスに社会主義核心価値観の反映を要求、管理弁法の意見募集開始」の記事によると、中国国内では生成AIサービス提供に関する厳しい規制が定められています。

具体的には、生成されるコンテンツに、社会主義核心価値観(※)を反映し、国家権力の転覆や、社会主義体制の打倒、分離独立の扇動など社会秩序を乱す可能性のある内容が出力されてはならないとしています。

また、プライバシーの保護や虚偽情報の生成を防止する措置も求められるなど、国家として管理を強化しています。

つまり、政府の方針に従った形で開発され、特定の情報が制限された上でリリースされているといえるでしょう。

※社会主義核心価値観
中国共産党が提唱する、富強、民主、文明、和諧(調和)、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業(勤勉)、誠信(誠実)、友善(友好)を基本内容とする価値観。

企業としても、生成AIの開発や利用についてガイドラインを示しています。

中国系の大手動画共有アプリのTikTokは、2023年5月9日、「人工知能(AI)に関するプラットフォーム規範および提案」を発表しました。具体的には以下のような内容が盛り込まれています。

・AIで生成されたコンテンツに明確な標識をつけること
・投稿者がコンテンツの全責任を負うこと
・バーチャルヒューマンの実名登録を要求
・権利侵害やデマ拡散の禁止

生成AIは、すでに人間が作成したものと見分けがつかないほどの文章や画像を作成することができます。そのような環境で、生成AIが作成したのかどうかを明記することは必要な措置かもしれません。

中国の生成AIは日本では使えない?

日本でも中国で開発された生成AIを利用することはできるのでしょうか。2024年11月時点では、文心一言や通義千問など主要な生成AIモデルのユーザー登録を行うには、中国の電話番号での認証が必要になります。

筆者も、以前中国に住んでいたときに使っていたSIMカードを久しぶりに起動して認証を試みましたが、すでに使えなくなっており、登録することはできませんでした。外国人にとっては、まだまだハードルが高いのが現状です。

しかし、メールアドレスの登録だけで利用できる中国発の生成AIもあります。短編動画アプリ「Tik Tok」を運営しているバイトダンスがリリースした「豆包(Doubao)」は、ChatGPTと同じように、チャット形式でテキストの生成が可能です。同じくショート動画アプリ「快手(Kuaishou)」がリリースした「KLING(クリング)」は動画生成に特化しています。

次回は豆包やKLINGを実際に使ってみた様子を紹介します。

【参考】
生成AIサービスに社会主義核心価値観の反映を要求、管理弁法の意見募集開始(中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ
変化する中国市場(後編)台頭する中国企業とAI+が変えるビジネス | 等身大の中国市場を理解する – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
TikTok、生成AI技術を用いたコンテンツ管理を強化(中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ

奄美大島出身。大阪府在住のライター。 タイと中国の日本人学校に教員として通算8年間勤務。 帰国後、フリーのライターへ。 補習校講師として、オンラインで国語を教えています。

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