ビジネス界隈で生き残るのはピクニック上手!?遠山正道さんが語る「風の時代」をリードする人
全国にファンを有するスープ専門店・スープストックトーキョーをはじめ、ブランディングから事業開発まで幅広く手がける株式会社スマイルズ。時代を読み解く力に優れている代表・遠山正道さんに、「時代の移り変わりとこれからの生き方」について伺いました。どうやら、「上手にピクニックができるかどうか」が決め手となりそうです。その真意とは。人生100年時代を幸福に生きるためのヒントを一緒に探りましょう。(2024年9月@SHIBUYAサクラステージ7F「タワーのアワー」にて実施)
目次
地の時代から風の時代へ――新しい価値の基準
占星術の世界では、「地の時代」「風の時代」があります。これまでは長く「地の時代」が200年続いていました。そこでは、物質、所有、安定、組織といったものが重視されており、産業革命以降から今まで、人類はひたすら成長・蓄積を追い求めてきました。
ところが、2024年から向こう200年間の「風の時代」に入ったといわれているのです。「風の時代」とは、情報、体験、移動、そして協力といった目に見えない内面価値が重要。物質が不要になるわけではないのですが、物質的な成功に縛られるのではなく、内面価値を充実させ、自分がどう生きるのかと問われるのです。
それはビジネスの世界も同じでしょう。「目に見える成果」から解放され、協力や循環を大切にする方向に変わっていくと考えています。今までは企業や組織のルールの中で結果を出すことが重要でしたが、これからはもっと個人の特性を活かした自由な発想が求められるようになるでしょうね。私たちもそれに伴って変革しなければいけません。
Z世代は自分にとって「意味のあるもの」を大切にしたい
私は、そういった時代を生き抜くためのヒントとして「ピクニック紀」というものを唱えています。その前に、Z世代の価値観についても触れてみましょう。以前、大学で講演をしたとき、学生たちに「成功と安定、どちらがいい?」と聞いてみたんです。すると7〜8割が「安定がいい」と答えました。
私自身が起業家で講演のテーマが「起業して成功するには」だったので少し驚きましたが、話を進めていくうちに、彼らの素直な気持ちが理解できました。単に安定を求めているのではありません。むしろ、成功そのものへの嫌悪感を持っているんです。特に自分だけが豊かになるような成功に対して、拒絶反応があるように感じました。彼らは競争や成長を盲目的に追い求めるのではなく、「自分にとって意味のあるものを大切にする」傾向が強いんです。
2025年を境にして、「風の時代」とともに、若い世代が社会の価値観の主導権を握るでしょう。これもひとつの転換ですね。
ピクニック紀――自分に理由があることの強さ
私はそんなこれからの時代を「ピクニック紀」と呼んでいます。ピクニックにはルールやミッション、ビジョンが存在しません。だから、自分なりに楽しむ方法を見つけることが求められます。だれかに指示されなくても、課題を与えられなくても、自分の中に動機を見つけて動いていける強さ。それが、これからの生き方のヒントだと思っています。
出社すれば、会社が365日分給料を払ってくれるおめでたい時代はいずれなくなるはず。会社という組織より、プロジェクト単位、個人単位の時代となり、自ら企てられる人が生き残っていける。大手企業の名刺をただ持っているだけでは意味を持たないのです。
天才より「いい人」が選ばれる時代
プロジェクトや個人単位の時代に選ばれる人材は「いい人」なのではないでしょうか。過去に、GAFAの役員が「天才よりもいい人が欲しい」と回答したニュースが話題になりました。天才プログラマーやエンジニアは、インターネットが整備された今、場所を問わず簡単に採用することができますし、得意を活かして個人のスキルを発揮してもらえば十分です。
肝心なのは、そんな天才たちをまとめられる人。個性の強い人材をまとめて方向性を示しながら、みんなが緩やかに前に進められるよう支援できる人が必要不可欠です。思いやりを持ち、違いを尊重し、楽しく協力し合いながら働ける「いい人」が重宝される時代となるでしょう。
仕事でも趣味でもない「第3のゾーン」
そして、これからは「仕事」でも「趣味」でもない、「第3のゾーン」が重要になるでしょう。それは、純粋に自分がやりたいと思ってやる活動領域であり、結果的に新しい価値を生むものを指します。お金や評価が目的ではなく、やりたいからやる。それが大事なんです。
例えば、私はYouTubeで『新種の老人』という北軽井沢での暮らしを発信するチャンネルを運営しているのですが、自分がただ好きでやっているだけなんですよ。動画を撮ったり編集したり音楽を付けたり、すべてひとりでやっています。小さなことの積み重ねですが、それが楽しいんです。視聴者が500人だったとしても、劇場の動員人数として考えれば十分ですよね。
これからの社会では、ひとりひとりが自分の価値を見出し、それを楽しめることが大事です。たとえひとりであっても、ピクニックのような場で自分なりの楽しみ方を見つけられる人が、これからの時代をリードするでしょう。人任せではなく、自分で自分を幸せにできる人が、100歳まで幸福に生きられるんだと思います。
[取材・文/オカジマアヤノ]
1999年、東大阪生まれ。学生時代より人間編集部で執筆や編集を経験し、現在フリーで活動中。大阪の地下アイドル事情に精通し、年間ライブ参加数は100本を超える。