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JALも出資の超音速旅客機が再爆誕!世界初アメリカのトンデモ高性能な機体が出現する

ビジネス

パリエアショー会場でのブームのシャレー(屋外展示場)

超音速飛行の歴史

歴史上で超音速旅客機での定期商業飛行は、ロシア(当時ソビエト)が開発したツポレフTU-144と英仏開発のコンコルドの2機種のみしかありません。1年に満たない期間の定期運航で終わったTU-144に比べ、27年もの長い期間を定期商業飛行したコンコルドでしたが、チャーター便での事故をきっかけに2003年にその役目を終えました。高速飛行から経済性を追求する時期でもあったのです。

超音速機のコンコルドとは、マッハ2.04(時速2,497㎞/h)で飛行する機体であり、現行の航空機の平均速度マッハ0.84(時速1,028㎞/h)の約2.4倍のスピードで飛んでいました。

開発当事国の英仏での運航のみとはいえ、定期便で就航していた実績は多大なものがあります。アメリカではボーイングが計画した2707型がありましたが、モックアップが完成した状況で開発予算が打ち切られました。超音速飛行が終了して20年、航空大国のアメリカは威信をかけた超音速旅客機製造の再挑戦を始めています。

ブームスーパーソニックとは

完成したスーパーファクトリーとブームスーパーソニックの想像図 ©BOOM Supersonic

コロラド州デンバーに拠点をおくブーム テクノロジーズは、2014年に誕生した航空機メーカーで超音速旅客機「ブームスーパーソニック」の開発に取り組んでいます。同社の機体は現行機の2倍となるマッハ1.7(2,080km/h)で飛行し、コンコルド以降の経済性が求められる航空業界において新たな展開をもたらすことが期待されているのです。機体設計が確定し、4基のシンフォニーと名付けられたエンジンが採用されることも決定。さらに、新たな製造工場はスーパーファクトリーと呼び、ノースカロライナ州グリーンズボロでの着工も発表されました。ブームスーパーソニックはその将来ビジョンをパリのエアショーで発表しました。

ブームの会見では、航空業界における超音速旅行の復活と発展にあると言います。彼らは従来の航空旅行の限界を打破し、高速で効率的な移動を提供することを目指しています。超音速機の導入により、長距離の移動が大幅に短縮され、人々のビジネスや個人的な交流がさらに活発化することが期待されています。

パリエアショーでの記者会見

パリエアショーでブームの記者会見の様子

エアショー開催時期に併せて、ブームスーパーソニックがパリエアショーで量産機「オーバーチュア」に関する記者会見を行いました。

パリエアショー会場で記者会見するブーム スーパーソニックのブレイク ショルCEO

ブームスーパーソニック CEOのブレイク・ショル氏が登壇し、超音速機を開発するに至った経緯を紹介。「より多くの人がより多くの場所により頻繁に行ける世界は、私たちが暮らす子供たちが成長するのに、はるかに良い世界であると信じています。より高速なフライトが可能になることで、世界へのアクセスが劇的に向上します」。

ユナイテッド航空が発注した時の宣伝画像©BOOM Supersonic

同社はこれまでJAL、ユナイテッド航空、アメリカン航空の3社から35機の確定と、75機の追加オーダーを得ています。また、軍事用途としてノースロップグラマンと米空軍からも支援が約束されていることが改めて知らされました。

強力なパートナーの発表

製造パートナー紹介の前に、ブームで諮問委員を務める元ボーイング会長兼CEOのフィル コンディット氏の紹介がありました。60年前にボーイングで進められていた前述の超音速機事業に関わったことを想い出し、改めてブームの事業に携わることをうれしく思うと発言。

そして機体製造の新たなパートナーが紹介されました。主翼に関しては、スペインの「アエルノバ」を選定。世界最大の航空宇宙企業のひとつで、オーバーチュアのガルウィングは超音速性能を強化するだけでなく、亜音速および遷音速の飛行性能も向上させる形状になっています。

胴体はイタリアの「レオナルド」に決まりました。オーバーチュアの独自設計の胴体は、航空機の前方において直径が大きくなり、後方に向かうにつれて小さくなるエリアルールの設計手法を適用し、抵抗を最小限に抑えて超音速での燃料効率を最大化しました。

そして、水平尾翼に関しては、スペインの「アシトゥーリ」です。オーバーチュアの尾翼は、亜音速での離着陸時のスピード制御される時に機能を発揮します。

エンジンについて

「FTTドイツランド」とのパートナーシップを拡大すると発表。同社の豊富な経験を活用し、「シンフォニー」エンジンが設計から生産に移行する際の継続性を確保します。ブーム社はフロリダ州ジュピターをエンジン初期生産拠点として特定しました。エンジンの技術特性は以下の通り。ミディアムバイパスターボファンエンジン、アフターバーナーなし、推力35,000ポンド、100% 持続可能な航空燃料 (SAF) 用に最適化したシングルステージ72インチファンを装備します。

量産工場の竣工

グリーンズボロでの工場竣工の報告として14,000㎡の敷地面積で年間最大33機の航空機を生産できるように設計されていることが発表されました。 また、この場所には2番目の組立ラインを建設する計画があり、これにより生産速度を2倍にすることができ、同様に来年半ばの完成に向けて順調に進んでいます。

盛大な記者会見

発表ではCEOのブレイク・ショル氏が熱く語りました。新たなパートナーの代表と肩を組み、オーバーチュア機の大型モデルを渡しての満面の笑みは、それだけ順調な開発だと伝えたい気持ちが伝わってきました。

これからの課題は受注増です。現在は3社のエアラインからオプションを入れてもまだ110機にすぎません。軍事目的ではノースロップグラマンと米空軍で兵士の輸送に使うと言うことですが、受注数は発表されていません。計画が順調に進めば受注が増えることからこの先数年が正念場です。

輝ける未来に向けて

ブームスーパーソニックがパリエアショーでオーバーチュアの量産機に関する発表を行い、開発に弾みがつくパートナーの詳細が明らかにされました。オーバーチュアは、旅客輸送の新たな時代の幕開けを象徴する存在となり、航空業界に大きな影響を与えることでしょう。3社のみの機材発注では心もとなく、新たな受注を期待したいところでもあり、スムーズな機体開発を見守りたいものです。

<取材・文/航空ジャーナリスト 北島幸司>

航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「あびあんうぃんぐ」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram @kitajimaavianwing

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