「貧相にならないよう値上げに踏み切った」大丸松坂屋に聞く、インフレ下のおせち商戦2022
オードブル形式おせちが若者に支持
さらに、年始のゲン担ぎの意味で「長生きすることを願い、数の子や黒豆を食べる」といった風習も時代とともに薄れてきているという。正月らしい気分を楽しめる「食べきりサイズ」を選び、メイン料理は好きなものを食べたいという消費志向が強くなった。
そして、コロナ禍で地元に帰省できない時期が続いたことで、今までおせち料理を食べなかった若者の購入も増加傾向にある。仲の良い友人・知人内で食べられるオードブル形式のおせちも注目されており、おせちの多様化が一気に進んだわけだ。
ボリュームにいたっては「1つのお重からおせち料理を食べる傾向から、コロナ後で1人1膳用のものが増えた。だが、今年は、複数人前のおせち料理を食べるお客様が増えてきている」と内藤氏は言う。
富裕層向けおせちのニーズも
2022年も年末年始が近づくなか、大丸松坂屋の旬なおせち料理について、内藤氏は「5年前から企画している『おつまみおせち』が好評」だと話す。
「今年は酒場詩人・吉田類さん監修のおつまみおせちを販売しており、居酒屋メニューやおせちの定番料理をお酒の肴になる“おつまみ風”に仕上げています。1品食べきりサイズになっているのは喜んでいただけるポイントになっていて、年末31日の朝に店頭で受け取り、同日の昼から飲み食いできるのも、おつまみおせちが支持されている理由に挙げられます」
また、先述した肉のおせちに加え、「富裕層向けのおせちもニーズが高まっている」と内藤氏は続ける。
「板前割烹の元祖『京ぎをん 浜作』に監修いただいたおせちは税込4万8,600円と高価格帯の商品になっていますが、これまで650個の販売数(※取材時)に上っています。通常、百貨店とのコラボは行わない名店でしたが、具材へのこだわりやOEMによる大量生産など、企業努力によって今回の商品化が実現した形です」