「鶏レアチャーシュー」で19人が食中毒…鶏肉の生食はなぜ危険なのか
〈誤解3〉自己責任で食べるから大丈夫という誤解
「自己責任で食べるから、超レアで焼いて」というような、ほとんど生食を求めるかのようなリクエストをする客をたまに見かけるが、こうしたリクエストもおかしな話だ。
食中毒患者を診察した医師は、関係各機関への届け出が義務づけられる。たとえ客の求めに応じたのだとしても、ひとたび食中毒を出したらその責任は店にある。つまり何も責任を負うことのできない客自身が「自己責任で」と店に鶏肉の生食をせがむこと自体がおかしな話なのだ。
そもそも質がよく状態のいい食肉は(適切な火入れが条件ではあるが)加熱したほうが香りも味も膨らむし、加熱の加減によってさまざまな食感を生むことができる。また、日本人が和食や魚食で培った、生食至上主義を肉食にそのまま当てはめるのは少々無理がある。
日本人が肉食に親しむようになってまだ百数十年。世界でもっとも遅れて肉食を始めた私たちは、肉食に対してもっと謙虚になる必要があるのかもしれない。
鶏の生肉を堂々と生食できる未来
長く鶏肉の生食文化があると言われる鹿児島県と宮崎県には、それぞれ「生食用食鳥肉の衛生基準」がある。そのガイドラインでは、解体時に肉を汚染させず、表面を焼烙殺菌することになっている。「生食用」の鶏肉は加熱用とは別のラインで運用するなどして、鶏肉の生食を存続させようという自治体ぐるみの取り組みだ。
鶏肉がカンピロバクター菌に汚染される仕組みは大きく2つ。解体時の「中抜き」という工程の際に鶏肉の腸管がちぎれて、肉を汚染してしまうパターン。もうひとつは羽を抜くため、鶏を丸ごと湯漬けしたときに、汚染された羽の根元に菌が入り込んでしまうパターン。いずれにしてもできる限り汚染のないように解体し、汚染が発生しても肉の表層で止めて殺菌することがまずは重要なのだ。
2018年、鹿児島県は18年ぶりに「生食用食鳥肉の衛生基準」を改定。いくつかの項目をさらに厳格化し、「安全な生食」への道を示そうとしている。
それまでのガイドラインでは「焼烙殺菌した後、腹腔内は流水にて十分な洗浄を行い、必要に応じて殺菌を行う」だったのを、改正後は「流水にて十分に洗浄し、必要に応じて殺菌を行った後、水切りを十分行うこと」、そして「水切り後に表面を焼烙殺菌すること」と工程の締めくくりの焼烙殺菌を義務づけた。