新大河ドラマの主人公「紫式部」の代表作『源氏物語』の意外な真実
一部の身分の高い人ならでは、のんきな感想が
そのほかにも、平安時代末期から鎌倉時代前半に生きた藤原定家が書いた『明月記』には、飢饉が起こったせいで、いろんなところに人が倒れており、人間の腐った臭いが立ち込めていたという記述だけでなく、自分の屋敷にもその腐った臭いが入ってきて、臭くてかなわなかった……との感想が書かれています。
ですが、藤原定家は高い地位にいる貴族で、いわば現代の政治家のようなもの。本来であれば、「飢饉で苦しむ民を助けなければ」「基金への対策ができず、人々を救えなかった自分が恥ずかしい」などのコメントがあってもおかしくないのですが、定家は「臭いし汚いし困ったよ」というのんきな感想しか残していません。
「民衆」をそっちのけにして、貴族たちは恋愛や文化を楽しんでたいそんな時代に、平安時代の文学は生まれたのでした。
<TEXT/歴史学者 本郷和人>