小学校の給食は「人間国宝の茶碗」で。鳥取県がめざす“日本一”の食育
受ける側の心がないと台無しに
海外旅行の新人添乗員のエピソードとして、「五つ星ホテルでお客さまといっしょにその土地土地の食事をとるので羨ましいと言われるけれど、皆さんの食事の進み具合とかあれこれ次の予定を考え、とりあえず口のなかに入れるという食事なので、どんな料理だったのかほとんど記憶がない。おいしいと感じる余裕などない」というものがあります。
どんなにおいしい、あるいは心を込めてつくられた食事でも、受ける側の心がそこに向いていなければ台無しになってしまいます。コンビニで買ったお惣菜でも急いでそのままかき込むようにして食べるのと、お皿に移してきちんと食べるのでは味が違ってくるようにも思えます。
「食育」というと食材や料理法に目が行きがちですが、どんな心構えでいただくか、お箸や、ナイフ・フォークをどう使うか、あるいは器はどんなものを……そこも踏まえたのが「食育」であることを、この西郷谷の取り組みが改めて教えてくれました。
<TEXT/日本財団鳥取事務所所長 木田悟史>